一、有限会社の株式会社への組織変更の手続に重大なかしがあるとして、その効力を争う場合には、株式会社の設立無効の訴に関する商法四二八条の規定を準用し、組織変更後の会社の株主または取締役は、組織変更後の会社を被告として、その設立無効の訴を提起しうるものと解するのが相当である。 二、組織変更前の有限会社に対し持分を有する者が、右組織変更の無効を主張して組織変更後の株式会社の設立無効の訴を提起するとともに、右持分の確認を求めるには、組織変更後の株式会社を相手方として、右確認を求めることができる。
一、有限会社の組織変更の無効を主張する場合と商法四二八条の準用の有無 二、有限会社の組織変更により設立された株式会社の設立無効の訴とともに組織変更前の有限会社に対する持分の確認を求める場合の相手方
有限会社法18条,有限会社法67条,有限会社法75条,商法428条,民訴法46条
判旨
有限会社から株式会社への組織変更に重大な瑕疵がある場合、設立無効の訴えの規定を準用して無効を主張できる。組織変更時に社員であった者は、表面上株主として扱われていなくても、実質的な株主として原告適格を有する。
問題の所在(論点)
有限会社から株式会社への組織変更に手続上の瑕疵がある場合、設立無効の訴え(会社法828条1項1号)の規定を準用できるか。また、帳簿上株主として扱われていない元社員に、当該訴えの原告適格が認められるか。
規範
組織変更は会社と利害関係人との間の複雑な法律関係に影響を及ぼすため、その無効については画一的な処理を要する。したがって、手続に重大な瑕疵がある場合、会社の設立無効の訴えに関する規定(現行会社法828条1項1号等)を準用し、組織変更後の会社の株主等は、組織変更後の会社を被告として無効の訴えを提起できる。また、組織変更時に社員であった者は、当然に株主となるべき地位にあるため、実質的に株主として原告適格を有する。
重要事実
事件番号: 昭和35(オ)1444 / 裁判年月日: 昭和39年4月17日 / 結論: 棄却
私立学校法附則第三項により私立学校の組織変更につき所轄庁の認可がなされた場合に、右認可の取消につき訴願の裁決を経なくても、右組織変更の無効確認の訴を提起することができる。
上告人は有限会社Dタクシーの社員として600口の持分を有していた。しかし、同会社は上告人のあずかり知らぬ間に株式会社への組織変更を行い、被上告会社となった。上告人の持分は第三者名義に変更されており、被上告会社の名簿上、上告人は株主として記載されていなかった。上告人は、総社員の一致という法定の手続を欠くとして、組織変更後の会社に対し、設立無効の訴えおよび持分確認の訴えを提起した。
あてはめ
組織変更は、形式的には旧会社の解散と新会社の設立に近い手続がとられ、法的安定性の観点から設立無効の規定を準用すべきである。本件では、総社員の一致という厳格な要件を欠く重大な瑕疵が主張されており、無効の訴えの対象となる。また、上告人は組織変更前の有限会社の社員であり、法的には当然に組織変更後の株主たる地位を承継する立場にある。名簿上株主として扱われていないという形式的事実にかかわらず、実質的には株主としての利害関係を有するため、原告適格が認められる。持分確認についても、組織変更前後で会社の人格は同一である以上、組織変更後の会社を被告として争うことができる。
結論
組織変更の無効を訴えをもって争うことができ、上告人はその原告適格を有する。したがって、訴えを却下した原判決は破棄される。
実務上の射程
組織変更における手続瑕疵(総社員の同意欠如等)を争う際の構成として、設立無効の訴えの類推(準用)を認める。名簿上の不備があっても、実質的な権利関係に基づいて原告適格を広く解釈する点で実務上重要である。
事件番号: 昭和46(オ)396 / 裁判年月日: 昭和46年7月16日 / 結論: 棄却
株式会社の代表取締役が新株を発行した場合には、右新株が、株主総会の特別決議を経ることなく、株主以外の者に対して特に有利な発行価額をもつて発行されたものであつても、その瑕疵は、新株発行無効の原因とはならないものと解すべきである。
事件番号: 昭和54(オ)410 / 裁判年月日: 昭和54年11月16日 / 結論: 棄却
株主総会決議無効確認の訴の決議無効原因として主張された瑕疵が決議取消原因に該当し、しかも、右訴が決議取消訴訟の出訴期間内に提起されている場合には、決議取消の主張が出訴期間経過後にされたとしても、右決議取消の訴は出訴期間の関係では決議無効確認の訴提起時に提起されたのと同様に扱うのが相当である。
事件番号: 昭和39(オ)883 / 裁判年月日: 昭和47年11月8日 / 結論: その他
株式会社が株券の発行を不当に遅滞し、信義則に照らして、株式譲渡の効力を否定するのを相当としない状況に至つたときは、株券発行前であつても、株主は、意思表示のみにより、会社に対する関係においても有効に株式を譲渡することができる。
事件番号: 昭和43(オ)565 / 裁判年月日: 昭和44年1月31日 / 結論: 棄却
見せ金による株式の払込をしたにすぎない株主であつても、原告として、株主総会決議無効確認の訴を提起することができる。