消費生活協同組合法による協同組合の総会の議決または選挙が当然に無効であるかまたは不存在である場合においては、同法九六条所定の行政庁による取消の手続を経ていないでも、裁判所は、訴訟における前提問題として、右議決または選挙の無効または不存在の判断をすることができる。
消費生活協同組合の総会の議決または選挙の無効・不存在と消費生活協同組合法九六条
消費生活協同組合法96条
判旨
消費生活協同組合の総会の議決または選挙が当然に無効または不存在である場合、行政庁への取消手続を経ることなく、組合員は直ちにその確認の訴えを提起できる。また、裁判所は訴訟において当該議決等の無効または不存在を前提問題として調査・判断することが可能である。
問題の所在(論点)
消費生活協同組合法96条に基づく行政庁の取消手続を経ることなく、総会議決や選挙の無効・不存在を訴訟において主張し、または裁判所がこれを判断することができるか。
規範
消費生活協同組合法による協同組合の総会議決または選挙において、その瑕疵が当然に無効または不存在と評価される場合には、同法96条に定める行政庁に対する取消手続(行政上の救済手段)を前置する必要はない。したがって、組合員は民事訴訟を通じて直接その効力を争うことができ、裁判所もこれを前提問題として独自に判断しうる。
重要事実
上告人(消費生活協同組合)において、Dを理事として選任する旨の決定がなされた会合が開催された。しかし、当該会合は総会としての実体を有しておらず、選任に関する議決または選挙としての実態を欠くものであった。これに対し、行政庁への取消手続を経ることなく、当該議決等の効力を否定できるかが争われた。なお、具体的な招集手続や定足数等の詳細は判決文からは不明である。
事件番号: 昭和34(オ)1261 / 裁判年月日: 昭和35年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】招集権限のない者によって招集された総会決議は法律上存在しないものと解され、その不存在は訴えによらずとも抗弁をもって主張することができる。 第1 事案の概要:上告人である中小企業等協同組合において、Dが代表者として総会を招集し、決議に基づき代表者として登記された。しかし、原審の認定によれば、当該総会…
あてはめ
本件会合は、組合の総会としての実体を有していない。そのため、そこでの決定は法的な意味での「総会の議決または選挙」として成立しておらず、不存在と評価されるべきものである。このように議決等が当然に無効または不存在である場合には、行政庁による裁量的・監督的な取消手続を待つまでもなく、客観的に効力を有しない。したがって、行政上の手続を履践していないことは、裁判所が瑕疵の有無を調査・判断する妨げにはならない。
結論
行政庁への取消手続を経ることなく、組合員は議決等の無効または不存在の確認を求めることができ、裁判所もその効力を否定する判断を下すことができる。
実務上の射程
行政上の監督処分としての取消手続(生協法96条)と、私法上の効力を争う民事訴訟との関係を整理した射程の広い判例である。生協法における「取消」は行政処分の性質を持つが、瑕疵が重大で無効・不存在といえる場合には、特別の手続を経ずに民事裁判で決着できることを明示した。会社法上の決議取消の訴え(831条)のような排他的な訴訟手続が法定されていない団体法理全般に応用可能な規範といえる。
事件番号: 昭和43(オ)916 / 裁判年月日: 昭和44年7月4日 / 結論: 棄却
一、労働金庫の会員外の者に対する貸付は無効である。 二、労働金庫の員外貸付が無効とされる場合においても、右貸付が判示のような事情のもとにされたものであつて、右債務を担保するために設定された抵当権が実行され、第三者がその抵当物件を競落したときは、債務者は、信義則上、右競落人に対し、競落による所有権の取得を否定することは許…
事件番号: 昭和47(オ)17 / 裁判年月日: 昭和47年3月30日 / 結論: 棄却
水産業協同組合法による協同組合の総会の議決が当然に無効である場合においては、同法一二五条所定の行政庁に対する取消の手続を経ることなしに、各組合員は、直接裁判所に対し、その無効を前提として権利関係の確認を求めうるものと解すべきである。