財団法人設立のため、その趣旨に賛同する者から寄附金を収受し、役員として理事長、理事、評議員を選出し、常勤執行機関として事務総局事務総長を選任したうえ、右寄附金中の一定額を基本財産として特定個人名義で銀行に定期預金とし、民法所定の事項を含む寄附行為を作成して、財団法人設立許可申請手続を推進していたものは、いわゆる権利能力なき財団と認めるのが相当である。
権利能力なき財団が認められた事例
民法34条,民法43条
判旨
権利能力なき財団の実体を有する団体が、その代表者の肩書を付して手形を振り出した場合、その責任は団体に帰属し、代表者個人が当然に振出人としての責任を負うものではない。
問題の所在(論点)
権利能力なき財団の代表者が、団体の代表者として手形を振り出した場合に、当該代表者個人が手形上の振出人としての責任を負うか。また、その前提として権利能力なき財団としての実体を備えているといえるか。
規範
権利能力なき財団として社会生活において独立した実体を有するといえるためには、①個人財産から分離独立した基本財産を有していること、および、②その運営のための組織を有していることを要する。このような実体を有する団体において、その代表者が団体の名称および代表者の肩書を用いて手形を振り出した場合、手形債務は当該団体に帰属する。
重要事実
D財団は、財団法人設立準備中の団体であり、11の会社から拠出された寄附金1,450万円のうち700万円を基本財産として定期預金としていた。また、理事長、理事、評議員を選出し、執行機関として事務総局事務総長を設けるなど、寄附行為案に基づいた運営組織を備えていた。上告人は、同財団の事務総長として、D財団事務総局事務総長の記名押印をして本件手形を振り出した。
あてはめ
D財団は、個人から独立した700万円の基本財産を有し(①)、理事会や事務総局といった運営組織を具備していた(②)。したがって、D財団は権利能力なき財団として社会生活上の独立した実体を有していたといえる。本件手形は、上告人がD財団の代表者として振り出したものであり、その実体は団体の行為である。そうである以上、代表者という機関の地位にある上告人が、個人として当然に振出人の責任を負うと解することはできない。
結論
上告人は、D財団の代表者として手形を振り出したにすぎないため、個人として手形債務を負担しない。代表者の個人責任を認めた原判決は破棄される。
実務上の射程
権利能力なき社団の法理を財団についても認めた重要判例である。答案上は、設立中の法人の責任帰属や、権利能力なき団体の代表者の個人責任が問われる場面で、団体の実体(独立した財産と組織)の有無を検討する際の判断指標として活用する。
事件番号: 昭和24(オ)286 / 裁判年月日: 昭和31年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】正当な権限に基づき、特定の団体を表示した他人の名において手形を振り出した者は、特段の事情がない限り、個人として手形上の義務を負わない。団体が民法上の組合である場合も、手形上の責任を負うのは組合員自身であって、権限ある代理人として振出行為をした個人ではない。 第1 事案の概要:被上告人は、法人格のな…