一 検察官が控訴をした事件は、たとえその申立理由が被告人に利益なものである場合であつても、刑訴法四〇二条にいう「被告人のため控訴をした事件」にあたらない。 二 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律五条一項違反の罪が反復累行された場合には、特段の事情のない限り、個々の契約又は受領ごとに一罪が成立する。
一 検察官が被告人の利益のために控訴をした事件と刑訴法四〇二条にいう「被告人のため控訴をした事件」 二 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律五条一項違反の罪が反覆累行された場合の罪数
刑訴法402条,出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律5条1項,刑法45条
判旨
出資法5条1項違反の罪が反復累行された場合、特段の事情のない限り包括一罪とはならず、個々の契約または受領ごとに一罪が成立し、併合罪として処断すべきである。また、刑訴法402条の不利益変更禁止の原則は、検察官が被告人の利益のために控訴した場合には適用されない。
問題の所在(論点)
1. 出資法5条1項(高金利)違反の罪が多数反復された場合の罪数関係(包括一罪か併合罪か)。 2. 検察官が被告人の利益のために控訴した場合に、刑訴法402条の不利益変更禁止の原則が適用されるか。
規範
1. 罪数関係について:出資法5条1項は「業として」行うことを要件としておらず、同種行為の無制限な反復累行を予定しているとは解されない。したがって、反復累行された場合は特段の事情のない限り個々の行為ごとに一罪が成立し、併合罪(刑法45条)となる。営業行為としてなされることは、むしろ悪質性を増大させるものであり、包括一罪と評価すべき事由には当たらない。 2. 不利益変更禁止の原則について:刑訴法402条にいう「被告人のため控訴をした事件」とは、被告人または被告人のために同法353条等に定める者が控訴した事件を指す。検察官が控訴した場合は、たとえその申立理由が被告人の利益を目的とするものであっても、同条の適用はない。
事件番号: 平成16(あ)2723 / 裁判年月日: 平成17年8月1日 / 結論: 棄却
1 出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)5条2項所定の行為は,反復累行されても,特段の事情のない限り,個々の契約又は受領ごとに一罪が成立し,併合罪となる。 2 貸金業の規制等に関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)47条2号,11条1項に違反…
重要事実
金融業を営む被告人が、約3年間にわたり33名の顧客に対し合計465回、法定限度を超える利息契約を締結し受領したとして、出資法違反で起訴された。第一審はこれを併合罪として罰金刑を科したが、検察官は、一部の罪について公訴時効が完成している(免訴すべき)として、被告人の利益のために控訴した。原審は、本件を包括一罪と解した上で、第一審を破棄し被告人を懲役刑および罰金刑に処した。
あてはめ
1. 本件各所為は、33名に対し465回にわたり行われたものであるが、出資法の立法趣旨(金融秩序の保持)に照らせば、個々の契約ごとに独立した罪が成立すると解すべきである。本件において、これを一罪と評価すべき「特段の事情」は認められないため、併合罪として処断すべきである。これを包括一罪とした原審の判断は、公訴時効の審査を不当に回避した点で違法である。 2. 検察官による控訴である以上、刑訴法402条の適用はない。したがって、第一審の罰金刑よりも重い懲役刑を科すこと自体は、直ちに同条に違反するものではない。
結論
本件各所為は併合罪であり、個別に時効を判断すべきである。原審が包括一罪と認めて一部の時効完成を無視した点は違法であり、破棄差し戻しを免れない。
実務上の射程
出資法違反の罪数判断において、安易な包括一罪論を否定し、原則として個数基準(契約・受領ごと)を維持する実務の指針となる。また、不利益変更禁止の原則の適用範囲について、控訴の主体(検察官か被告人側か)という形式的基準を重視する立場を明確にしている。
事件番号: 昭和55(あ)826 / 裁判年月日: 昭和57年12月21日 / 結論: 棄却
出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律五条五項は、金銭の貸付を行う者が受ける元本以外の金銭は当該貸付に関するものと認められる限り利息の実質を有すると否とを問わずすべて利息とみなし、契約の締結及び債務の弁済の費用といえどもその例外とはしない趣旨である。
事件番号: 昭和52(あ)186 / 裁判年月日: 昭和52年10月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】出資法2条の預り金禁止規定および同法11条1項の罰則規定は、憲法29条、13条、14条、22条のいずれにも違反せず、同法2条の規定は不明確とはいえない。 第1 事案の概要:被告人らは、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律(出資法)2条1項、2項に違反して預り金業務を行ったとして起訴され…
事件番号: 昭和33(あ)1571 / 裁判年月日: 昭和36年9月8日 / 結論: 棄却
出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第二条、第一一条は、憲法第一四条に違反しない。
事件番号: 昭和34(あ)2414 / 裁判年月日: 昭和36年4月26日 / 結論: 棄却
一 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第二条、第一一条は憲法第二九条に違反しない。 二 右法律第二条第二項にいわゆる「不特定且つ多数の者」とは、一般大衆を指称するのであり、たまたまその中に少数の親族を含んでいたからといつて、これを除外すべきものではない。