1 出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)5条2項所定の行為は,反復累行されても,特段の事情のない限り,個々の契約又は受領ごとに一罪が成立し,併合罪となる。 2 貸金業の規制等に関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)47条2号,11条1項に違反して無登録で貸金業を営む行為と,業として金銭の貸付けを行う中で個別的に出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)5条2項の制限超過利息を受領する行為とは,刑法54条1項の観念的競合又は牽連犯ではなく,併合罪の関係にある。 3 出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)5条2項の制限超過利息の取得につき継続的に事実を仮装する意図で,架空人名義の銀行預金口座を入手し,同口座に元金及び利息を振り込ませることにより,上記架空人が犯罪収益等を取得したものであるように仮装したなど判示の事実関係の下においては,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律10条1項に該当する上記行為と,個別的に上記制限超過利息を受領する行為とは,刑法54条1項前段の観念的競合ではなく,併合罪の関係にある。
1 出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)5条2項所定の行為が反復累行された場合の罪数 2 貸金業の規制等に関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)47条2号,11条1項に違反して無登録で貸金業を営む行為と出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)5条2項の制限超過利息を受領する行為との罪数関係 3 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律10条1項の犯罪収益等の取得につき仮装する行為と出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)5条2項の制限超過利息を受領する行為とが併合罪の関係にあるとされた事例
刑法45条,刑法54条1項,出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)5条2項,貸金業の規制等に関する法律2条1項,貸金業の規制等に関する法律3条1項,貸金業の規制等に関する法律11条1項,貸金業の規制等に関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)47条2号,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律10条1項
判旨
出資法5条2項違反の行為が反復された場合、個別の受領ごとに一罪が成立し、無登録貸金業罪や組織的犯罪処罰法10条1項違反の罪とは併合罪の関係に立つ。
問題の所在(論点)
1. 出資法5条2項違反の利息受領行為が繰り返された場合の罪数関係はどうなるか。 2. 無登録貸金業罪と個別の利息受領行為、および組織的犯罪処罰法違反の罪と利息受領行為は、それぞれ観念的競合または牽連犯の関係に立つか。
事件番号: 昭和52(あ)1271 / 裁判年月日: 昭和53年7月7日 / 結論: 破棄差戻
一 検察官が控訴をした事件は、たとえその申立理由が被告人に利益なものである場合であつても、刑訴法四〇二条にいう「被告人のため控訴をした事件」にあたらない。 二 出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律五条一項違反の罪が反復累行された場合には、特段の事情のない限り、個々の契約又は受領ごとに一罪が成立する。
規範
1. 出資法5条2項違反の罪(制限超過利息の受領)が反復累行された場合、特段の事情のない限り、個々の受領ごとに一罪が成立し、併合罪(刑法45条前段)となる。 2. 無登録貸金業罪と個別の制限超過利息受領行為は、社会的見解上1個のものと評価できず、かつ犯罪の通常形態として手段・結果の関係にもないため、併合罪となる。 3. 犯罪収益等の取得に関する事実の仮装行為(組織的犯罪処罰法10条1項)と制限超過利息受領行為も、社会的見解上1個のものと評価できず、併合罪となる。
重要事実
被告人は、貸金業法上の登録を受けずに貸金業を営み、多数の顧客に対し出資法5条2項所定の制限利率を超える利息を受領する行為を繰り返した。さらに、これらの元利金を架空人名義の銀行預金口座に振り込ませることで、犯罪収益の取得につき事実を仮装した。弁護人は、これら一連の行為は包括一罪、あるいは牽連犯(刑法54条1項後段)や観念的競合(同項前段)として、全体として一罪を構成すると主張した。
あてはめ
1. 出資法5条2項は、業として貸し付ける場合の利率を定めるが、同条1項と同様に、個別の受領行為ごとに社会的評価がなされるべきである。したがって、反復されても包括一罪にはならない。 2. 無登録貸金業罪は「業として」行うことを処罰する一方、個別利息受領は具体的利息の取得を処罰する。両者は行為の態様や保護法益の観点から社会的見解上1個の行為とはいえず、手段・結果の必然的関係(牽連犯)も認められない。 3. 架空口座を利用した事実仮装行為についても、個別の利息受領行為とは別の社会的評価を受けるべき独立した行為であり、併合罪として処断すべきである。
結論
被告人の各行為はすべて併合罪の関係に立つ。包括一罪、牽連犯、または観念的競合として一罪とする弁護人の主張は採用できず、原判断は正当である。
実務上の射程
貸金業法・出資法違反および組織的犯罪処罰法が絡む事案における罪数処理の指針となる。特に「業として」行われる営業犯的側面と、個別の法益侵害(利息受領)的側面を峻別し、原則として併合罪とする判断枠組みは、実務上重要である。
事件番号: 平成6(あ)407 / 裁判年月日: 平成8年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】貸金業法2条1項にいう「貸金業」とは、反復継続の意思の下に金銭の貸付け等を行うものをいい、営利目的や特別の設備の備付までは不要である。 第1 事案の概要:被告人は、貸金業法11条1項に基づく登録を受けずに金銭の貸付けを行ったとして、無登録営業の罪に問われた。弁護人は、当該行為が「貸金業」に該当する…
事件番号: 昭和55(あ)826 / 裁判年月日: 昭和57年12月21日 / 結論: 棄却
出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律五条五項は、金銭の貸付を行う者が受ける元本以外の金銭は当該貸付に関するものと認められる限り利息の実質を有すると否とを問わずすべて利息とみなし、契約の締結及び債務の弁済の費用といえどもその例外とはしない趣旨である。
事件番号: 昭和27(あ)2827 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】貸金業等の取締に関する法律における「貸金業」とは、反復継続の意思をもって金銭の貸付け又はその媒介を業として行うことを指し、不特定多数人を相手にする場合に限定されない。 第1 事案の概要:被告人は、貸金業等の取締に関する法律上の登録を受けずに、反復継続して金銭の貸付け等を行ったとして起訴された。弁護…
事件番号: 昭和28(あ)2226 / 裁判年月日: 昭和28年9月10日 / 結論: 棄却
貸金業等の取締に関する法律二条にいわゆる貸金業とは反覆継続の意思を以て金銭の貸付又は金銭の貸借を媒介することを指すものであり、(昭和二六年(あ)二七〇二号、同二八年二月三日第三小法廷決定参照)、必ずしも所論のように「普段の収入の源泉となす意思を以て」それらの行為をなした場合に限るべきいわれはない。