非反則行為として通告手続を経ないで起訴された事実が、公判審理の結果反則行為に該当するもの判明した場合には、刑訴法三三八条四号により公訴を棄却すべきである。
非反則行為として通告手続を経ないで起訴された事実が反則行為に該当するものと判明した場合と公訴提起の効力
道路交通法118条1項2号,道路交通法125条1項,道路交通法125条2項,道路交通法130条,道路交通法別表,道路交通法(昭和46年法律98号による改正前のもの)118条1項3号,道路交通法(昭和46年法律98号による改正前のもの)別表,刑訴法338条4号
判旨
起訴状の公訴事実によれば道路交通法上の反則行為に該当しないが、審理の結果、反則行為に該当することが判明した場合、反則金納付の通告等の手続を経ていない公訴提起は無効であり、裁判所は判決で公訴を棄却すべきである。
問題の所在(論点)
起訴時点では非反則行為として扱われていた事実が、審理の結果、道路交通法上の「反則行為」に該当することが判明した場合、通告手続を経ていない公訴提起を有効として実体判決をすることができるか。公訴提起の手続が法律の規定に違反し無効といえるか(刑事訴訟法338条4号)。
規範
道路交通法130条は、反則者に対し、原則として反則金納付の通告手続等を経た後でなければ公訴を提起できない旨を規定している。反則金納付により公訴提起を免れる地位を保障する同法128条2項の趣旨に鑑みれば、起訴状の公訴事実では反則行為に該当しないとされていても、公判審理の結果、反則行為に該当することが判明した場合には、同条の規定が適用され、適法な手続を欠く公訴提起として刑事訴訟法338条4号により公訴を棄却すべきである。
重要事実
被告人は、法定最高速度60km/hの道路を100km/hで走行した(40km/h超過)として速度超過の罪で公訴提起された。当時の道路交通法上、速度超過が一定範囲内であれば「反則行為」として通告手続の対象となるが、起訴状記載の40km/h超過は非反則行為として直接公訴提起の対象であった。しかし、原審(控訴審)は事実を再認定し、実際の走行速度は80km/h(20km/h超過)であったと判断した。この認定事実に依れば、被告人の所為は道交法上の「反則行為」に該当するものであった。
事件番号: 平成25(さ)1 / 裁判年月日: 平成25年9月17日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法上の反則行為に該当する事実について、法が定める通告・納付期間の経過という特例手続を経ずに提起された公訴は、その手続が規定に違反するため刑事訴訟法338条4号により棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度50km/hの道路において時速81km/h(31km/h超過)…
あてはめ
被告人が行った20km/hの速度超過は、道交法125条1項等の規定により「反則行為」に該当し、被告人は「反則者」に当たる。道交法130条は、反則者に対し通告手続等を経ない公訴提起を禁止している。本件では通告手続等が行われていないことが明らかであり、たとえ起訴状の記載が非反則行為であったとしても、認定された事実が反則行為である以上、同条の制約を受ける。したがって、本件公訴提起は「公訴提起の手続がその規定に違反した」ものと評価される。
結論
本件公訴提起は無効であり、裁判所は刑事訴訟法338条4号に基づき、判決で公訴を棄却すべきである。
実務上の射程
反則金制度(交通反則通告制度)の不利益取扱いを禁止する趣旨から、裁判所の事実認定によって訴訟条件の欠缺が露呈した場合の処理を示した。答案上は、訴訟条件の成否が審理の途中で判明した場合の対応として、338条4号の適用場面を特定する際に用いる。
事件番号: 昭和56(さ)4 / 裁判年月日: 昭和57年9月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】交通反則者に対し、反則金の納付通告等を経ることなく提起された公訴は、公訴提起の手続が規定に違反したため無効であるとして、刑訴法338条4号に基づき棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度を17キロメートル超過して普通乗用自動車を運転した。当初、交通事件原票の誤記により、被告人に…
事件番号: 平成25(さ)5 / 裁判年月日: 平成26年4月15日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】交通反則通告制度の対象となる反則行為について、同制度に基づく通告及び納付期間の経過という適法な手続を経ずに提起された公訴は、その手続規定に違反した無効なものとして棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度30km/hの道路を74km/hで走行した(44km/h超過)として略式…
事件番号: 平成20(さ)3 / 裁判年月日: 平成21年3月16日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法の改正により無免許運転から免許条件違反へと法定刑が変更された行為について、反則金納付等の通告手続を経ずに公訴を提起することは、刑事訴訟法338条4号の公訴提起の手続が規定に違反したときに該当する。 第1 事案の概要:被告人は、運転できる普通自動車が自動三輪車及び軽自動車(360cc以下)…
事件番号: 平成13(さ)1 / 裁判年月日: 平成13年12月13日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】道路交通法違反事件において、当初の認定とは異なり実際の違反速度が法定最高速度の範囲内であり反則行為に該当する場合、通告手続を経ない公訴提起は無効であるため、公訴棄却の判決をすべきである。 第1 事案の概要:被告人は、指定最高速度50km/hの道路を85km/h(35km/h超過)で走行したとして、…