一 公衆浴場の営業許可権者が大阪府知事であつた当時に制定された右許可基準に関する大阪府公衆浴場法施行条例(昭和二五年条例第八五号)第二条第三号の「土地の状況、人口の密度その他特殊事情により知事が必要と認めたとき」という規定は、その後、法律の改正によつて、右営業許可権が大阪市長に委譲された後においても、公衆浴場法第二条第三項、地方自治法第一四条第一項によつて認められた条例制定権の範囲を超えているものとは認められない。 二 公衆浴場法(昭和三九年法律第一二一号による改正前のもの)第二条、前記条例および大阪府浴場審議会規則(昭和二六年規則第一八号)は、いずれも憲法第二二条に違反しない。
一 大阪府公衆浴場法施行条例(昭和二五年条例第八五号)第二条第三号は公衆浴場法第二条第三項地方自治法第一四条第一項によつて認められた条例制定権の範囲を超えるか 二 公衆浴場法(昭和三九年法律第一二一号による改正前のもの)第二条、前記条例および大阪府浴場審議会規則(昭和二六年規則第一八号)は憲法第二二条に違反するか
公衆浴場法(昭和39年法律121号による改正前)2条,大阪府公衆浴場法施行条例(昭和25年条例85号)2条3号
判旨
公衆浴場法2条及び関連条例による設置場所の距離制限は、公衆浴場の利用の便宜を確保し保健衛生上の目的を達成するための合理的な規制であり、憲法22条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
公衆浴場法2条およびそれに基づき距離制限を定めた都道府県条例の規定が、憲法22条1項が保障する職業選択(営業)の自由を不当に侵害し、違憲とならないか。
規範
職業の自由に対する規制が、国民の生命・健康等に対する危害を防止するなどの消極的な警察的目的のために行われる場合、その規制が目的達成のために必要かつ合理的な範囲内である限り、憲法22条1項に違反しない。
重要事実
被告人らは、大阪府公衆浴場法施行条例が定める公衆浴場の設置場所に関する距離制限(既設の公衆浴場から一定の距離を保つこと)に反して浴場を経営したとして、公衆浴場法違反に問われた。被告人らは、当該距離制限が憲法22条1項(職業選択の自由)に違反し、また法律の委任の範囲を超えて無効であると主張して上告した。
あてはめ
公衆浴場は地域住民の日常生活において不可欠な保健衛生施設である。無制限な新設を許せば、経営の不安定化を招き、結果として既存の浴場の設備改善が妨げられたり、廃業に追い込まれたりすることで、地域住民の浴場利用に支障をきたす恐れがある。したがって、適正な配置を目的とする距離制限は、公衆衛生の維持という公共の福祉に適合する合理的な規制といえる。
結論
公衆浴場法2条および大阪府公衆浴場法施行条例の距離制限規定は、憲法22条1項に違反しない。
実務上の射程
消極目的規制(警察規制)における合憲性判定の先例として重要である。後に薬事法違憲判決(最大判昭50.4.30)により「厳格な合理性の基準」が確立されるが、本判決はその前段階として公衆浴場の特設性を認めたものとして位置付けられる。答案では、消極目的規制の枠組みを用いつつ、浴場の公共施設的性格に言及する際に引用する。
事件番号: 昭和30(あ)2429 / 裁判年月日: 昭和32年6月25日 / 結論: 棄却
公衆浴場法第二条第一項、第八条第一号の規定は、職業選択の自由を保障する憲法第二二条の規定に違反しない。
事件番号: 昭和60(行ツ)197 / 裁判年月日: 平成元年3月7日 / 結論: 棄却
公衆浴場法二条二項及び大阪府公衆浴場法施行条例二条は、憲法二二条一項に違反しない。