道路標識は、いかなる通行を規制するのか容易に判別できる方法で設置すべきものであり、本件一方通行の道路標識のように、その設置場所、設置状況にてらし、どの道路の一方通行を指示するものか明らかでないような方法(判文参照)で設置された標識によつては、適法かつ有効な一方通行の規制がなされているものとはいえない。
道路標識の設置方法が適切でないためその標識による適法かつ有効な一方通行の規制がなされていないものとされた事例
道路交通法7条1項,道路交通法9条,道路交通法119条1号,道路交通法119条2項,道路交通法施行令7条1項,道路交通法施行令7条3項
判旨
道路標識の設置方法が法令に違反し、車両等の運転者がいかなる通行を規制するのかを容易に判別できない場合、当該標識による通行規制は適法かつ有効なものとはいえない。そのため、運転者が標識に気付かず規制に反する通行をしたとしても、道路交通法上の過失による通行禁止・制限違反の罪は成立しない。
問題の所在(論点)
不適切な態様で設置された道路標識に依拠して、道路交通法7条1項に基づく通行規制の効力を認め、同法違反(過失による通行禁止違反)の罪を問うことができるか。
規範
道路交通法施行令7条3項に基づき、道路標識は歩行者や運転者が前方から見やすいように設置されなければならず、単に視認できるだけでは足りない。標識は、運転者がいかなる通行を規制するのかを容易に判別できる方法で設置されるべきであり、この基準を満たさない不適切な設置状況にある標識は、適法かつ有効な通行規制としての効力を有しない。
重要事実
被告人は原動機付自転車を運転中、一方通行(東から西)の道路を逆走した。当該道路の標識は、交差点から約4.7メートルも離れた場所に設置され、矢印が示す方向も正確な西向きではなく約40度西南方を向いていた。さらに、交差する別の道路の一方通行規制や駐車禁止標識と重なり合うように設置されており、客観的には交差道路の規制を示すものと誤認されやすい状況であった。
あてはめ
本件標識は、交差点から離れた位置にあり、指示方向も不正確である上、他道路の標識と重なっている。この設置状況に照らせば、本件道路の通行規制を明らかに指示するものとは認められず、むしろ交差道路の規制を示すものと解される。このような設置方法は施行令に違反するものであり、運転者に対して東行を禁止する通行規制が適法かつ有効になされているとはいえない。したがって、被告人が規制に気付かず逆走したとしても、注意義務違反としての過失を認めることはできない。
結論
本件道路標識による通行規制は有効ではなく、被告人に過失も認められないため、道路交通法違反の罪は成立せず、被告人は無罪である。
実務上の射程
行政上の規制措置が前提となる刑事罰において、その前提となる行政処分の外観(標識の設置等)が著しく不適切な場合に、規制の効力自体を否定し、構成要件該当性や過失を排斥する法理として活用できる。特に形式的な規制違反が問われる事案において、規制の公示方法の適法性を争う際の強力な根拠となる。
事件番号: 昭和42(あ)2673 / 裁判年月日: 昭和43年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】速度制限の道路標識が設置されている場合、当該標識が適法かつ有効なものである限り、運転者はその規制を遵守する義務を負う。また、控訴棄却の際に控訴審の訴訟費用を被告人に負担させることは、特段の事情がない限り違法ではない。 第1 事案の概要:被告人が速度制限違反に問われた事案において、第一審の有罪判決に…