道路標識は、いかなる車両のいかなる通行を規制するのか容易に判別できる方法で設置すべきものであり、本件右折進行禁止の道路標識のように、その支柱に、形式外観および記載内容において、禁止、制限の対象となる車両の種類等を特定する補助標識とまぎらわしい標示板を取りつけた規制標識(判文参照)によつては、適法かつ有効な右折進行禁止の規制がなされているものとはいえない。
道路標識の設置方法が適切でないため適法かつ有効な右折進行禁止の規制がなされていないものとされた事例
道路交通法7条1項,道路交通法9条,道路交通法119条1項1号,同法施行令7条,道路標識、区画線及び道路標示に関する命令2条
判旨
道路標識の設置方法が法令に違反し、規制の内容を一見して容易に判別できない場合、当該標識による通行規制は適法かつ有効なものとはいえない。したがって、これに違反する行為について道路交通法違反の罪は成立しない。
問題の所在(論点)
不適切な態様で設置された道路標識による通行規制が、道路交通法119条1項1号の罪の前提となる「適法かつ有効」な規制といえるか。
規範
道路交通法施行令7条3項は、道路標識について「前方から見やすいように設置しなければならない」と規定している。これにかんがみれば、道路標識は単に見えるだけでなく、運転者が「いかなる車両のいかなる通行を規制するのか」を容易に判別できる方法で設置すべきである。判別困難な設置方法は同令に違反し、その通行規制は適法かつ有効に存在するものとは認められない。
重要事実
京都府公安委員会は、交差点において全方向からの右折を禁止していた。本件標識は交差点手前右側に設置され、支柱には「貨物……の左折を除く」旨の方形の標示板が取り付けられていた。しかし、この標示板は、実際には規制されていない「左折」に関する注意事項を掲げたにすぎず、法令上の正規の補助標識の形式とも異なるものであった。被告人は貨客兼用車を運転し、当該交差点を右折した。
あてはめ
本件標識の支柱に付された標示板は、その形式外観や記載方法が、法令上の補助標識(車両特定や時間制限を示すもの)と紛らわしい。しかも、本来警戒標識にのみ付されるべき性質の事項を禁止標識に付しており、運転者がいかなる進行を禁止されているのかを一見して容易に判別できるものとは認められない。このような設置方法は道路交通法施行令7条3項に違反する。
結論
本件標識による通行規制は適法かつ有効に存在するものとはいえず、被告人の行為は道路交通法119条1項1号の罪を構成しない。被告人は無罪である。
実務上の射程
行政上の規制違反を前提とする刑事罰において、前提となる行政処分の手続的・外形的妥当性が可罰性に影響を及ぼすことを示した。特に「一見して容易に判別できるか」という可視性・明確性の基準は、道路交通法違反の成否を争う際の有力な指針となる。
事件番号: 昭和42(あ)2673 / 裁判年月日: 昭和43年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】速度制限の道路標識が設置されている場合、当該標識が適法かつ有効なものである限り、運転者はその規制を遵守する義務を負う。また、控訴棄却の際に控訴審の訴訟費用を被告人に負担させることは、特段の事情がない限り違法ではない。 第1 事案の概要:被告人が速度制限違反に問われた事案において、第一審の有罪判決に…