一 公安委員会の行なう道路通行の禁止、制限は、その処分の内容を標示する道路標識によつてしなければ法的効力を生じない。 二 道路の「一方通行」を行なうには、「一方通行」を行なう道路の入口に所定の「指導標識」を設置するほか、その道路の出口等所要の場所に指定方向に逆行する通行を禁止すべき内容の「禁止標識」を設置することを要する。 三 「屈折方向(一方向)」の道路標識は単に屈折方向を指示する「指導標識」であつて、一方通行の指定方向に逆行する通行を禁止すべき内容を標示するものではないから、かかる道路標識を設置しても、道路の一方通行出口から入口方向に至る通行を禁止する効力を生ずるものではない。
一 道路標識と道路通行の禁止、制限処分の効力 二 「一方通行」の道路の出口等に設置すべき道路標識 三 「屈折方向(一方向)」の道路標識の効力
道路交通取締法6条1項,道路交通取締法29条4号,道路交通取締法施行令5条,道路標識令(昭和25年3月31日総理府令建設省令1号)2条,道路標識令(昭和25年3月31日総理府令建設省令1号)3条
判旨
公安委員会の行う道路の通行禁止等の制限は、処分の内容を具体的に標示する適切な道路標識が設置されない限り法的効力を生じない。
問題の所在(論点)
公安委員会による道路通行の禁止・制限処分が法的効力を発生させるためには、どのような態様の道路標識が設置されている必要があるか。特に、処分の内容と異なる種類の標識が設置されている場合に、当該処分に違反したとして刑罰を科せるか。
規範
公安委員会が道路の通行を禁止・制限する際は、道路交通取締法施行令の規定に基づき、その処分の具体的な内容を適正に標示する道路標識によってしなければ、法的効力を生じない。特に一方通行の規制を行うには、入口への「指導標識」の設置のみならず、出口等の所要の場所に逆行を禁止する旨の「禁止標識」を設置することを要する。
重要事実
事件番号: 昭和34(あ)1540 / 裁判年月日: 昭和35年3月3日 / 結論: 棄却
道路において演説をなし人寄をする場合を許可制とした道路交通取締法第二六条第一項第四号、第二九条第一号、同法施行令第六九条第一項および昭和二九年北海道公安委員会規則第一二号道路交通取締法施行細則第二六条第八号の各規程は、憲法第二一条に違反しない。
被告人は、北海道公安委員会により一方通行に指定された札幌市内の道路において、出口から入口方向へ車両を逆行運転した。当該道路の入口には「一方通行」の標識があったが、出口付近には道路外側への進行を促す「屈折方向(一方向)」という指導標識が設置されているのみで、逆行を直接禁止する内容の「禁止標識」は設置されていなかった。原審は、当該標識によって一方通行の規制は一般的に認識可能であったとして有罪とした。
あてはめ
本件道路の出口に設置されていた「屈折方向(一方向)」の標識は、単に屈折方向を指示する「指導標識」にすぎない。これは、一方通行の指定方向に逆行する通行を禁止すべき内容を標示するものではない。したがって、たとえ公安委員会による指定告示が存在し、かつ当該標識が設置されていたとしても、逆行を禁止する処分の効力は発生していないといえる。効力のない処分を前提として、道路交通取締法違反の罪を構成することはできない。
結論
被告人の行為は有効な通行禁止処分に違反したものとはいえず、道路交通取締法違反の罪は成立しない。被告人は無罪である。
実務上の射程
行政上の規制違反を理由に刑罰を科す場合、行政処分の有効性が前提となる。本判決は、処分の内容を国民に周知するための形式(標識の種類や設置場所)が不適切であれば、処分の効力そのものが否定され、結果として処罰も否定されるという「適正な公示」の重要性を示している。答案上は、罪刑法定主義の観点や、行政処分の効力発生要件を論ずる際に参照すべきである。
事件番号: 昭和40(あ)1107 / 裁判年月日: 昭和41年4月15日 / 結論: 破棄自判
道路標識は、いかなる通行を規制するのか容易に判別できる方法で設置すべきものであり、本件一方通行の道路標識のように、その設置場所、設置状況にてらし、どの道路の一方通行を指示するものか明らかでないような方法(判文参照)で設置された標識によつては、適法かつ有効な一方通行の規制がなされているものとはいえない。