一、刑訴施行法第二条にいう「新法施行前に公訴の提起があつた事件」とは、昭和二三年一二月末日までに公訴の提起があつた事件をいい、その現に第一審に係属中たると上訴審に係属中たるとを問わず、またその判決が確定し執行の段階にあるものたると既に執行を終つたものたるとを問わず、すべてこれを含む趣旨である。 二、いわゆる旧法事件について高等裁判所のした決定に対しては、刑訴法第四二八条第二項の異議の申立をすることは許されない。
一、刑訴施行第二条にいう「新法施行前に公訴の提起があつた事件」の意義 二、いわゆる旧法事件について高等裁判所のした決定に対し刑訴法第四二八条第二項の異議のに申立が許されるのか
刑訴施行法2条,刑訴法428条2項
判旨
刑事訴訟法施行法2条により、新法施行前に公訴が提起された事件は、判決確定後の再審手続等も含め旧法が適用される。たとえ裁判所が誤って現行法を適用しても、旧法事件が新法事件に転化することはない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法施行法2条の適用範囲と、旧法下で公訴提起された事件の再審手続において、現行刑訴法上の不服申立制度(異議申し立て)を利用できるか。
規範
刑事訴訟法をいかなる時からいかなる事件に適用するかは、経過法の立法に際して諸般の事情を勘案して決せられるべき問題であり、法律(立法)に一任されている。刑事訴訟法施行法2条にいう「新法施行前に公訴の提起があつた事件」とは、昭和23年12月末日までに公訴の提起があった事件を指し、判決確定後の執行段階にあるものも含まれる。したがって、旧法下で公訴提起された事件に付随する再審手続には、現行刑訴法ではなく旧法および応急措置法が適用される。
重要事実
申立人(被告人)は、大正3年に強盗殺人罪で無期懲役が確定した。その後、現行刑訴法の施行後である昭和35年に、確定判決(第二審)を対象として再審請求を行った。名古屋高裁は昭和36年に再審開始決定をしたが、検察官が現行刑訴法428条2項に基づき異議申し立てを行った。原審(名古屋高裁)は、人権保障の観点から新法を適用すべきとして、この異議申し立てを適法と認め、再審開始決定を取り消した。これに対し申立人が特別抗告を行った。
事件番号: 昭和33(し)14 / 裁判年月日: 昭和33年5月27日 / 結論: 棄却
一 確定判決に対する再審を開始するか否かの手続は、憲法にいう「裁判の対審」に当たらない 二 刑訴法第四三五条第六号にいう「明らかな証拠」というのは証拠能力もあり証明力も高度のものをいい、被告人が弁護人に宛てた書信の如きを含まない 三 同条同号の「原判決において認めた罪より軽い罪」というのは法定刑の軽い罪をいい、心神耗弱…
あてはめ
本件事件は大正3年に公訴提起・終結しており、施行法2条の「新法施行前に公訴の提起があつた事件」に該当する。そのため、本件の再審手続には旧法および応急措置法が適用されるべきであり、現行刑訴法428条2項の異議申立制度は認められない。原審が「人権保障の理念」を理由に新法の適用を肯定した判断は、経過規定の解釈を誤ったものであり、憲法判断としても不当である。また、裁判所が誤って新法を適用したとしても、そのことによって法的性質が「新法事件」に転化するわけではない。
結論
原決定を取り消す。旧法および応急措置法の下では高等裁判所の決定に対する異議申立制度が存在しないため、検察官の異議申し立ては不適法として棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事手続の経過規定(施行法)の解釈に関する重要判例。新旧法の適用関係は立法政策の裁量に委ねられており、旧法事件については再審等の付随的手続も含め一貫して旧法が適用されるという「旧法事件」の範囲を明確にした。また、裁判所の誤用によって適用法性が逆転しないことも示している。
事件番号: 昭和31(し)12 / 裁判年月日: 昭和31年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法施行前に公訴が提起された事件(いわゆる旧法事件)に対する不服申立てについては、刑訴施行法2条に基づき、現行法ではなく旧刑事訴訟法及び刑事訴訟応急措置法が適用される。 第1 事案の概要:業務上横領等被告事件について、新刑事訴訟法の施行日である昭和24年1月1日より前に公訴が提起された。この…
事件番号: 昭和54(し)94 / 裁判年月日: 昭和54年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有罪の確定判決に対しどの限度で再審請求を許すかは、もっぱら立法政策の問題であり、刑事訴訟法435条6号の規定が憲法31条、32条に違反することはない。 第1 事案の概要:有罪の確定判決を受けた被告人が、再審事由を規定する刑事訴訟法435条6号の文言ないし運用が憲法31条および32条に違反する旨を主…
事件番号: 昭和62(し)45 / 裁判年月日: 平成2年10月17日 / 結論: 棄却
旧刑事訴訟法の下において有罪の確定判決を受けた事件に対する再審請求につき高裁がした決定に対し、刑訴応急措置法一八条により最高裁判所に申し立てられた特別抗告については、刑訴法四一一条三号は準用されない。
事件番号: 昭和32(す)356 / 裁判年月日: 昭和32年6月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法下で提起された事件の再審請求棄却決定に対し、最高裁判所への即時抗告は認められない。最高裁判所の裁判権は裁判所法7条により限定されており、法規に定めのない抗告を受理することはできない。 第1 事案の概要:抗告人は強盗殺人等の罪で有罪判決を受け、その判決が確定した。これに対し抗告人が再審請…