証拠保全手続は控訴審には適用がないと解するのが相当である。
証拠保全手続は控訴審に適用があるか。
刑訴法179条,刑訴法433条1項,刑訴規則137条,刑訴規則217条3号
判旨
刑事訴訟法179条に基づく証拠保全手続は、第一審における第1回公判期日前になされるべき手続であって、事後審である控訴審においては適用されない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法179条が定める「第1回公判期日前」に、控訴審の段階が含まれるか。換言すれば、控訴審において証拠保全の手続を行うことが可能か、その可否が問題となる。
規範
刑事訴訟法上の証拠保全手続(179条)は、第一審における第1回公判期日前までの段階に限定される手続であり、事後審構造をとる控訴審においては適用されない。刑事訴訟規則217条3号が、第1回公判期日以後の証拠調べが控訴審での証拠保全を予定していないことを裏付けている。
重要事実
被告人Aに対する賍物故買被告事件が札幌高等裁判所函館支部に係属中、すなわち控訴審段階において、弁護人側が証拠保全の請求を行った。これに対し、原審裁判官は控訴審における証拠保全は認められないとして当該請求を却下したため、特別抗告がなされた。
事件番号: 昭和51(し)140 / 裁判年月日: 昭和51年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告の申し立ては、刑事訴訟法に基づき原裁判所に申立書を差し出す必要があり、提起期間経過後に直接最高裁判所へ提出された申し立ては、不適法として棄却される。 第1 事案の概要:申立人は、熊本地方裁判所裁判官がした証拠保全請求却下の裁判に対し、特別抗告を申し立てた。しかし、申立人は申立書を原裁判所で…
あてはめ
証拠保全手続の本旨は、公判期日において証拠調べを行うことが困難となる事情がある場合に備え、あらかじめ証拠を確保することにある。しかし、控訴審は第一審の判決の当否を事後的に審査する「事後審」としての性格を有しており、一審の第1回公判期日を経過した後は、原則として証拠保全の段階を過ぎたものと解される。本件請求は控訴審の係属中になされたものであるが、刑事訴訟規則の規定に照らしても控訴審での適用は否定されるべきである。
結論
控訴審における証拠保全請求は認められず、これを却下した原決定は正当である。
実務上の射程
第一審の第1回公判期日前までの限定を明示した。控訴審において新証拠の取調べを求める場合は、証拠保全ではなく、控訴審における証拠調べ請求(刑訴法393条)の手続によるべきことを示唆する。実務上、第1回公判期日後の証拠確保については、179条の証拠保全は利用できない点に注意が必要である。
事件番号: 昭和55(し)138 / 裁判年月日: 昭和55年11月18日 / 結論: 棄却
刑訴法一七九条に基づく押収の請求を却下する裁判は、同法四二九条一項二号にいう「押収に関する裁判」に含まれる。
事件番号: 昭和30(し)45 / 裁判年月日: 昭和30年10月29日 / 結論: 棄却
本件証拠請求却下の決定のように訴訟手続に関し判決前にした決定は、刑訴四三三条一項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」に当らない(昭和二九年(し)第三七号、同年一〇月八日第三小法廷決定、集第八巻一〇号一五八八頁)。
事件番号: 昭和34(し)48 / 裁判年月日: 昭和34年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高等裁判所がした決定に対し、刑事訴訟法428条2項に基づき異議の申立てをすることができる場合には、当該決定は同法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」に当たらない。 第1 事案の概要:申立人は、広島高等裁判所松江支部に対し、恐喝等被告事件の第一審判決の謄本の交付を請…
事件番号: 昭和26(し)45 / 裁判年月日: 昭和26年10月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法が適用される事件について、刑事訴訟法施行法3条の2に基づき上告に関する現行法の規定が準用される場合であっても、特別抗告に関する現行法433条の規定は適用されない。また、応急措置法18条に基づく最高裁判所への抗告は、憲法違反を理由とする場合に限られ、判例違反を理由とすることはできない。 …