刑訴法一七九条に基づく押収の請求を却下する裁判は、同法四二九条一項二号にいう「押収に関する裁判」に含まれる。
刑訴法一七九条に基づく押収の請求を却下する裁判と同法四二九条一項二号にいう「押収に関する裁判」
刑訴法179条1項,刑訴法429条1項2号
判旨
刑事訴訟法179条に基づく証拠保全としての押収の請求を却下する裁判は、同法429条1項2号にいう「押収に関する裁判」に含まれ、準抗告の対象となる。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法179条に基づく証拠保全としての押収請求を却下する裁判が、同法429条1項2号にいう「押収に関する裁判」として準抗告の対象となるか。
規範
刑事訴訟法429条1項2号に規定される「押収に関する裁判」には、裁判官が行った押収の処置だけでなく、証拠保全(同法179条)としてなされた押収の請求を却下する裁判も含まれる。また、証拠保全の必要性については、当該物件を押収しなければ証拠保全の目的を達することができないといえるか否かにより判断される。
重要事実
申立人は、刑事訴訟法179条に基づき裁判官に対し物件の押収を請求したが、裁判官はこの請求を却下した。これに対し申立人が準抗告(同法429条1項2号)を申し立てたところ、原審は却下の裁判が「押収に関する裁判」に含まれないとして準抗告を認めなかったため、最高裁に特別抗告がなされた。
事件番号: 昭和35(し)18 / 裁判年月日: 昭和35年5月28日 / 結論: 棄却
証拠保全手続は控訴審には適用がないと解するのが相当である。
あてはめ
原決定は押収請求却下の裁判を「押収に関する裁判」に含まれないとした点で解釈を誤っている。しかし、本件記録を検討すると、申立人が押収を求める物件については、検証の必要性はさておき、これをあえて「押収」しなければ証拠保全の目的を達することができないとまでは認められない。したがって、実質的な証拠保全の必要性が欠ける以上、請求却下自体は妥当である。
結論
証拠保全としての押収請求却下は「押収に関する裁判」に含まれるが、本件では押収の必要性が認められないため、準抗告を棄却した原決定の結論は正当であり、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
証拠保全手続における裁判官の不作為(却下)に対する救済路を確保した重要な判例である。答案上では、429条の「押収に関する裁判」を広く解釈する根拠として利用できる。あてはめにおいては「証拠保全の目的を達するためにその手段が必要不可欠か」という必要性の有無を検討する必要がある。
事件番号: 平成17(し)380 / 裁判年月日: 平成17年11月25日 / 結論: 棄却
捜査機関が収集し保管している証拠は,特段の事情が存しない限り,証拠保全手続の対象にならない。
事件番号: 昭和46(し)61 / 裁判年月日: 昭和46年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所による証拠調請求却下決定や、裁判長による被告人への質問処分などは、刑訴法433条1項に規定される「この法律により不服を申し立てることができない決定又は命令」には該当せず、特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:傷害被告事件の控訴審において、東京高等裁判所が申立人の証拠調請求を却下する…
事件番号: 昭和46(し)45 / 裁判年月日: 昭和46年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留理由開示の請求を却下した裁判官の裁判に対しては、刑事訴訟法429条1項2号により準抗告の申立てが可能である。 第1 事案の概要:本件において、請求人は裁判官による勾留理由開示請求の却下裁判に対し、最高裁判所へ特別抗告(刑訴法433条)を申し立てた。当該申立てが適法であるか、すなわち、同裁判が「…
事件番号: 昭和45(し)89 / 裁判年月日: 昭和45年11月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑訴法433条に基づく特別抗告において、実質的に原決定の不当を主張するにとどまり、憲法違反の具体的根拠を示さないものは、適法な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:申立人は、被疑者らに対する公務員職権濫用被疑事件について検察官がなした不起訴処分を不服として付審判請求を行った。第一審及び抗告審が…