一 米国紙幣および金塊は、関税法第一一一条第一項、第一一二条第三項にいう貨物に含まれる。 二 米国紙幣の取得者が、外国為替等集中規則第三条所定の集中義務を履行する意思を有せず、その取得した紙幣をひそかに日本円に交換することを依頼して他人に手交するなど、右集中義務の履行と全く相い容れない処分行為をした場合においては、その処分行為をしたときに、同条違反の罪が成立する。
一 外国紙幣および金塊は関税法上の貨物か 二 外国為替等集中規則第三条違反罪の成立時期
関税法111条1項,関税法112条3項,関税定率法1条,関税定率法3条,関税定率法別表4907,関税定率法7107,外国為替及び外国貿易管理法21条,外国為替及び外国貿易管理法70条21号,外国為替管理令3条,外国為替等集中規則3条
判旨
外国為替等集中規則に基づく外貨売却義務の猶予期間内であっても、売却意思なく隠密に他者へ手交する等の義務履行と相容れない処分行為をした場合、その時点で当該義務違反の罪が成立する。また、関税法上の追徴については、裁判時に犯人が目的物を占有している必要はなく、情を知って保管した者に対してもなし得る。
問題の所在(論点)
外国為替等集中規則3条が定める10日間の集中義務猶予期間中に、売却意思なく外貨を他者へ処分した場合、猶予期間の経過を待たずに義務違反の罪が成立するか。
規範
外国為替等集中規則第3条が定める外貨集中義務の猶予期間(10日間)は、同条所定の義務を履行する意思を有する者のために設けられたものである。したがって、かかる意思を有さず、ひそかに日本円への交換を依頼して他人に手交するなど、義務履行と全く相容れない処分行為をした者については、猶予期間の経過を待たず、その処分行為をした時点において義務違反の罪が成立する。
重要事実
被告人Aは、韓国貿易船の事務長より密輸入された米国紙幣等を取得した。Aは当初から外国為替公認銀行等へ売却する意思がなく、密かに日本円と交換することを依頼して、取得した即日に当該紙幣を共犯者Bへ手交した。弁護人は、集中義務の猶予期間である10日が経過する前に処分行為が行われたことを理由に、犯罪は不成立であると主張して上告した。
事件番号: 昭和31(あ)1069 / 裁判年月日: 昭和37年10月3日 / 結論: 破棄自判
米国軍票等を密輸入しようとして着衣等に隠匿し税関空港内為替管理所(外貨申告所)を通過しても、同税関内旅具検査所において発見され、これを税関外に持ち出すに至らなかつたときは(判文参照)、いまだ外国為替及び外国貿易管理法(昭和三三年法律第一五六号による改正前のもの)第四五条、第七〇条第一九号の無許可輸入罪は成立しない。
あてはめ
本件において被告人Aは、外貨を取得した当初から法定の売却手続を履践する意思を全く有していなかった。そればかりか、取得当日に日本円への換金を目的としてBに紙幣を手交しており、これは集中義務の履行と完全に矛盾する処分行為である。このような状況下では、Aが後に紙幣を取り戻して期間内に適正な手続を行う確実な事情も見出し得ない。したがって、猶予期間の趣旨を享受すべき立場になく、処分行為時をもって犯罪の成立を認めるのが相当である。
結論
義務履行の意思なく、義務と相容れない処分行為をした時点において、外国為替等集中規則違反の罪が成立する。
実務上の射程
行政上の義務履行に猶予期間が設けられている場合であっても、義務者の主観的意図や客観的処分行為により、期間経過前であっても不履行が確定したと評価し得ることを示した。特に行政刑法の分野において、猶予期間を奇貨として脱法行為を行うことを防ぐ理論構成として有用である。
事件番号: 昭和36(あ)1186 / 裁判年月日: 昭和37年7月13日 / 結論: その他
外国為替及び外国貿易管理法第二六条により非居住者に対する債権を取り立てる場合、標準決済方法によることは、同条の要求するところではなく、外国為替管理例第一〇条第一項が標準決済方法によるべきことを定めているのは、同法第二六条の委任によらないもので、罰則を伴う義務を定めたものではない。
事件番号: 昭和39(あ)2728 / 裁判年月日: 昭和40年9月10日 / 結論: 棄却
非居住者に対して、いわゆる「預り円」を支払うことは、外国為替及び外国貿易管理法第二七条第一項第二号前段の規制の対象となる。
事件番号: 昭和30(あ)341 / 裁判年月日: 昭和33年3月14日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】支払手段や貨物の「輸入」の既遂時期は、税関の関門を通過して外部に持ち出すことによって完了する。したがって、空港の旅具検査所等で税関吏員に発見され、いまだ税関の実力的支配下にある状態では、既遂罪は成立しない。 第1 事案の概要:被告人は、釜山から米国軍票を携帯して羽田空港に到着した。外貨申告手続にお…
事件番号: 昭和29(あ)3810 / 裁判年月日: 昭和33年3月14日 / 結論: その他
一 米国軍票を密輸入しようとして着衣等に隠匿して羽田空港税関内外貨申告所を通過しても、同税関内旅具検査所において職員に発見されたときは、未だ外国為替及び外国貿易管理法第四五条、第七〇条第一九号の無許可輸入罪は成立しない。 二 刑法第四八条二項の規定の適用が除外されている関税法違反の罪並びに外国為替並びに外国貿易管理法違…