一 職業安定法第五条にいわゆる「雇傭関係」とは、必ずしも厳格に民法第六二三条の意義に解すべきものではなく、広く社会通念上被用者が有形無形の経済的利益を得て一定の条件のもとに使用者に対し肉体的精神的労務を提供する関係にあれば足る。 二 同法第三二条第一項にいわゆる「職業紹介」とは同法第五条所定のとおり雇傭関係の成立をあつ旋することであつて、即ち媒介または周旋をなす等その雇傭関係について何らかの因果関係を有する関与をなせば足り、必ずしも雇傭契約の成立を必要とするものではない。 三 労働基準法第六条にいわゆる「他人の就業に介入し」とは、同法第八条の労働関係の開始存続等について、媒介または周旋をなす等その労働関係について何らかの因果関係を有する関与をなす場合をいうものであつて、必ずしも雇傭契約が成立する場合に関与することに限るべきでない。
一 職務安定法第五条にいわゆる「雇傭関係」の意義 二 同法第三二条第一項にいわゆる「職業紹介」の意義 三 労働基準法第六条にいわゆる「他人の就業に介入し」の意義
職業安定法5条,職業安定法32条1項,職業安定法64条1号,労働基準法6条,労働基準法8条,労働基準法118条1項
判旨
職業安定法32条1項の「有料の職業紹介」とは、実費を徴収する非営利の紹介だけでなく、営利目的で行われる紹介も含む。現実の手数料受領がなくても、営利の目的が認められれば、有料の職業紹介事業に該当する。
問題の所在(論点)
職業安定法32条1項(現32条の11第1項等)にいう「有料の職業紹介」の意義、および現実の手数料の受領がない場合であっても「有料の職業紹介事業」に該当するか。
規範
職業安定法32条1項にいう「有料の職業紹介」とは、①営利を目的としないで行う職業紹介であって実費としての料金を徴収するもの(実費職業紹介)、および②営利を目的として行う職業紹介(営利職業紹介)をいう。したがって、現実の対価受領が未了であっても、客観的に営利の目的が認められる場合には、同法上の「有料の職業紹介」に当たると解すべきである。
事件番号: 昭和27(あ)6649 / 裁判年月日: 昭和30年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働基準法6条の中間搾取の禁止、および職業安定法32条(当時)の有料職業紹介の禁止規定は、憲法上の適正手続や自由権に反するものではなく合憲である。また、起訴状において訴因が特定されている限り、訴訟手続上の瑕疵は認められない。 第1 事案の概要:被告人は、有料職業紹介事業の許可を得ることなく職業紹介…
重要事実
被告人は、職業安定法32条1項に違反して、許可を受けずに有料の職業紹介事業を行ったとして起訴された。第一審判決が認定した特定の事実(第二の(二))において、被告人が現実に手数料を受け取ったという事実は認定されていなかった。しかし、諸証拠に照らせば、被告人の当該行為が営利の目的から出たものであることは明らかであった。弁護人は、手数料の受領がない以上「有料」とはいえないと主張して上告した。
あてはめ
職業安定法5条3項(当時)の規定に照らせば、同法が規制対象とする「有料」の概念は、単に金員の授受が行われたか否かという形式的事実のみならず、その事業が営利を目的として営まれているかという実質的な態様によって判断されるべきである。本件被告人の行為は、現実の手数料受領こそ認定されていないものの、営利の目的をもって行われたことが証拠上明らかである。そうであれば、営利目的の職業紹介に該当し、客観的に「有料の職業紹介」としての性質を備えているといえる。
結論
被告人の行為は、現実の手数料受領がなくても「有料の職業紹介」に該当する。したがって、無許可でこれを行った行為について同法違反の成立を認めた原判断は正当である。
実務上の射程
行政法規における「営利性」の判断枠組みとして、対価の現実の授受がなくても、その目的によって「有料」の概念を画定できることを示した。労働基準法6条の中間搾取禁止規定や、職業安定法上の「職業紹介」の定義と並び、労働法・行政法分野における事業規制の範囲を画定する際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和29(あ)3272 / 裁判年月日: 昭和30年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有料職業紹介事業を原則として禁止する職業安定法32条(当時)の規定は、公共の福祉による正当な制限であり、憲法22条1項および13条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、有料職業紹介事業を原則禁止し許可制をとる職業安定法32条(当時の規定)に違反したとして起訴された。これに対し、被告人側は当該…
事件番号: 昭和27(あ)3350 / 裁判年月日: 昭和28年12月15日 / 結論: 棄却
職業安定法第三二条第一項の規定は、労働基準法第六条の規定に対しいわゆる特別法の関係にあるものではない。