一 求職の申込みをした者の氏名、住所、年齢、学歴、希望職種等を求職者リストに登載したうえ、求人の申込みをした者に対し右求職者リストから選び出した数名の求職者の氏名等を記載した名簿を交付するなどの方法で、求人者をして求職者と面接するように仕向けた本件所為(判文参照)は、職業安定三二条一項にいわゆる「職業紹介」にあたる。 二 職業安定法六四条一号は、同法三二条一項本文の規定に違反して有料の職業紹介事業を行つた者を、求職者の自由意思を制限するおそれのある手段を用いて行つたか否かを問うことなく、処罰する趣旨である。
一 職業安定法三二条一項にいわゆる「職業紹介」にあたるとされた事例 二 職業安定法六四条一号の法意
職業安定法32条1項,職業安定法64条1号
判旨
職業安定法上の「職業紹介」とは、求人者に対し求職者の氏名等を知らせ、面接に必要な書類を準備するなどして両者を面接させるよう仕向ける行為を指す。また、同法64条1号の罰則規定は、求職者の自由意思を制限する恐れのある手段を用いたか否かを問わず適用される。
問題の所在(論点)
被告人らが行った求職者情報の提供および面接設定の補助行為が、職業安定法32条1項にいう「職業紹介」に該当するか。また、同法64条1号の処罰において、求職者の自由意思を制限するような不当な手段を用いることが要件となるか。
規範
職業安定法における「職業紹介」とは、求職者の情報を管理し、求人者に対して特定の求職者を提示するとともに、面接の便宜を図るなどして、求人者と求職者の間における雇用関係の成立を媒介する行為をいう。また、無許可での有料職業紹介事業の禁止(同法32条1項)に違反した際の罰則(同法64条1号)は、その手段が求職者の自由意思を制限する性質のものであるか否かを問わず、無許可営業の事実をもって成立する。
重要事実
被告人らは「A協会」等の名称を用い、求職者の氏名、住所、学歴等を記した求職者リストを備え置き、いつでも紹介できる態勢を整えていた。その上で、契約金を支払った会員(求人者)に対し、リストから選んだ数名の情報を記載した「求職新聞」等を交付して知らせた。さらに、採用面接に不可欠な「面接案内書」や「面接通知書」を準備して提供し、求人者が求職者と面接するように仕向けていた。
あてはめ
被告人らは、単に情報を公表するにとどまらず、事務所に求職者リストを常備し、特定の求人者に対し選別した求職者名簿を交付している。これに加えて、面接案内書等の必要書類を準備するなどの具体的便宜を供与して面接へと誘導していることから、求人者と求職者の結びつきを積極的に媒介しているといえ、「職業紹介」にあたる。また、同法64条1号は無許可営業自体を禁止する趣旨であるから、手段のいかんを問わず、上記行為を業として行えば同罪が成立すると解される。
結論
被告人らの所為は職業安定法32条1項の「職業紹介」に該当し、不当な手段の有無にかかわらず同法違反の罪が成立する。
実務上の射程
「職業紹介」の定義を、単なる情報提供を超えた「面接への誘導・便宜供与」という実態面から判断した点に射程がある。現代の求人サイトやプラットフォームビジネスが、どこまで踏み込めば「職業紹介」として許可を要するかを検討する際の基礎的な判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和32(あ)3270 / 裁判年月日: 昭和36年4月11日 / 結論: 棄却
職業安定法第六三条第二号は、憲法第二二条第一項に違反しない。
事件番号: 昭和31(あ)2028 / 裁判年月日: 昭和34年9月22日 / 結論: 棄却
しかも、原審挙示の証拠によれば、右Aは、接客婦の雇入を欲して居る際、被告人と通謀し、或はその指示を受けた原審相被告人Bの慫慂を受け、同相被告人が伴つて来た、かねてより接客婦の職を永めている右C或はDに面接し、その結果同相被告人に右両名の雇入をそれぞれ申込み、原判示雇傭関係の成立した事実を認定し得られる。ただ、同相被告人…