裁判所が、立証趣旨その他により、証人が被告人の面前においては圧迫を受け充分な供述をすることができないと認めたとき、刑訴第三〇四条の二により、証人の供述中被告人を退廷させても、弁護人が終始右証人の尋問に立ち会つて主尋問をしており、且つ、供述終了後被告人を入廷させ、これに証言の要旨を告知して、その証人を尋問する機会を与え、しかも被告人が右証人に対し尋問をしている場合には、裁判所の右措置は、憲法第三七条第二項前段に違反しない。
刑訴法第三〇四条の二による措置と憲法第三七条第二項前段。
憲法37条2項,刑訴法304条の2
判旨
被告人の退廷による証人尋問(刑訴法304条の2)において、裁判所は立証趣旨等に基づき、被告人の面前では証人が圧迫を受け充分な供述ができないと認めれば足り、証人への発問により直接確認する必要はない。また、弁護人が立ち会い、事後に被告人に尋問の機会を付与していれば、憲法37条2項の証人尋問権に違反しない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法304条の2に基づく被告人の退廷措置において、裁判所が「証人が充分な供述をすることができないと認めるとき」の判断基準として証人への直接の確認が必要か。また、同条による退廷措置が憲法37条2項前段(証人尋問権)に反しないための要件は何か。
規範
1. 刑事訴訟法304条の2による被告人の退廷措置は、証人が被害者であるか否かを問わず適用される。2. 退廷の必要性は、立証趣旨その他により、証人が被告人の面前では圧迫を受け充分な供述をすることができないと裁判所が認めることで足り、証人に対し発問してその旨を確認する手続までは要しない。3. 弁護人が尋問に立ち会い、供述終了後に被告人を入廷させて証言の要旨を告知し、被告人に尋問の機会を与えれば、被告人の防御権は保障され憲法37条2項に違反しない。
重要事実
恐喝、傷害等の被告事件において、第一審裁判所は証人2名の尋問に際し、検察官の申出に基づき、弁護人の意見を聴いた上で被告人らを退廷させた。尋問中、弁護人は終始立ち会って主尋問等を行っていた。尋問終了後、裁判所は被告人らを入廷させて証言要旨を告知し、尋問の機会を与えた。現に被告人の一人は証人に対し尋問を行った。これに対し被告人側は、証人に対する確認手続の欠如や、被告人の面前での尋問権の侵害を理由に上告した。
あてはめ
本件では、裁判所は立証趣旨等から証人が被告人の面前で圧迫を受けると判断しており、殊更に証人へ発問して確認しなかったとしても、法304条の2の要件を満たすと解される。また、手続面においても、弁護人が尋問の全過程に立ち会い、事後に被告人らに対し証言要旨の告知と尋問の機会が実際に与えられている。このような代替的措置が講じられている以上、対面尋問が制限されても憲法37条2項の証人尋問権の本質的侵害には当たらないと評価できる。
結論
被告人を退廷させて証人尋問を行う措置は、本件の状況下では刑事訴訟法304条の2の規定に従った適法なものであり、憲法37条2項前段にも違反しない。
実務上の射程
証人保護と被告人の防御権の調和を図る場面で引用される。特に、304条の2の適用において「心理的圧迫」の認定に証人本人への問いかけが必須ではない点、および弁護人の立会いと事後の尋問機会付与があれば憲法適合性が維持されるという枠組みは、現代のビデオリンク方式等の議論の基礎としても機能する。
事件番号: 昭和26(あ)4481 / 裁判年月日: 昭和27年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は、被告人が申請した証人を裁判所が不必要と認める場合であってもすべて尋問しなければならないとする趣旨ではなく、証人採用の要否に関する裁判所の裁量を認めている。 第1 事案の概要:被告人は、公判過程において特定の人物(CことD)を証人として申請した。しかし、原審(裁判所)はこの証人申請…