一 略式命令をした裁判官が、同命令に対して正式裁判の請求があつた場合に、その事件を別件と併合した上、刑訴第三三二条により地方裁判所に移送しても、除斥さるべき職務の執行をしたものといえない 二 共同被疑者に対しても、他の共同被疑者の被疑事件につき、刑訴第二二七条による証人尋問の請求が許される
一 略式命令をした裁判官と除斥原因 二 共同被疑者に対し刑訴法第二二七条による証人尋問の請求が許されるか
刑訴法20条7号,刑訴法461条,刑訴法313条1項,刑訴法332条,刑訴法227条,刑訴法223条
判旨
刑事訴訟法20条各号の除斥事由について、事件の併合・移送決定や刑事訴訟法227条に基づく証人尋問は、裁判の実質的内容に関与するものではないため、除斥の対象となる「職務の執行」には含まれない。
問題の所在(論点)
1. 略式命令を発した裁判官による事件の併合・移送決定は、刑事訴訟法20条の除斥事由に該当するか。2. 刑事訴訟法227条による証人尋問を行った裁判官は、当該被告事件の審判から除斥されるか。3. 必要な共犯関係にある共同被疑者は、同法223条・227条にいう「被疑者以外の者」に含まれるか。
規範
刑事訴訟法20条各号にいう除斥すべき職務の執行とは、審判の実質的内容に影響を及ぼすおそれのある活動を指す。単なる形式的裁判にとどまる手続や、起訴前の証拠保全手続(同法227条)への関与は、予断を生じさせるおそれがあるとしても、同条にいう除斥事由には該当しない。
重要事実
被告人Cに対する公職選挙法違反事件で略式命令を発した裁判官が、正式裁判の申立て後、当該事件を被告人Aの事件に併合し、さらに他管轄へ移送する決定を行った。また、別の裁判官は、被告人Aの被疑事件につき、検察官の請求により共犯者Cの証人尋問(刑事訴訟法227条)を行った後、第一審の公判に関与した。これらの裁判官の関与が、除斥事由に該当するかが争われた。
あてはめ
1. 併合および移送の決定は、訴訟手続の進行を管理する形式的裁判にすぎず、審判の実質的内容に影響を及ぼすものではないため、除斥事由に当たらない。2. 同法227条の証人尋問は、起訴前の証拠確保を目的とする手続であり、これに関与したとしても、直ちに当該被告事件の裁判に関与することを妨げる除斥事由とはならない。3. 同法223条の「被疑者」とは、当該取調べ等の対象となっている特定の被疑者本人のみを指す。したがって、必要的共犯の関係にある共同被疑者であっても、当該被疑者以外の者として証人尋問の対象となり得る。
結論
いずれの裁判官の行為も刑事訴訟法20条の除斥事由には該当せず、原判決の訴訟手続に憲法違反や法令違反は認められない。
実務上の射程
裁判官の公平性を担保する除斥制度の適用範囲を限定的に解釈する際、本判例を引用する。特に「形式的裁判」や「起訴前の証人尋問」が予断排除の観点から問題となる場面で、実質的影響の有無を検討する際の基準として機能する。
事件番号: 昭和43(あ)1057 / 裁判年月日: 昭和43年9月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者の有罪判決に関与した裁判官が、別の被告人の同一犯罪事実を審判したとしても、直ちに「公平な裁判所」の要件に反するものではない。当該事情は刑訴法上の忌避原因にも当たらないため、憲法37条1項違反を構成しない。 第1 事案の概要:被告人の事件を審理した裁判官は、これより先に、被告人と共通の犯罪事実…