一 刑法第一九条第一項の規定は憲法第二九条に違反しない 二 実在しない東京都千代田区a町b番地司法局別館人権擁護委員会会計課作成名義の証明書を作成、行使した場合においても、その文書の形式外観において、一般人をして、右の如く公務所が実在し、右委員会がその職務権限内において作成した公文書であると誤信せしめるに足りるものと認められるときは、その所為は公文書偽造、同行使罪にあたる
一 刑法第一九条第一項の規定と憲法第二九条 二 公文書偽造、同行使罪にあたる事例
刑法19条1項,刑法155条1項,刑法158条1項,憲法29条
判旨
刑法19条1項に基づく没収は、憲法29条が保障する財産権を不当に侵害するものではなく、合憲である。また、公務員ではない者が作成した文書であっても、その性質や態様により公文書偽造罪(刑法155条)および同行使罪(刑法158条)が成立し得る。
問題の所在(論点)
1. 刑法19条1項に規定される没収は、憲法29条が保障する財産権に違反しないか。\n2. 本件文書の作成・行使行為が、刑法155条の公文書偽造罪および158条の同行使罪を構成するか。
規範
刑法19条1項の没収規定は、犯罪の反復を防止し、社会の安全を維持するという刑事政策上の目的から認められるものであり、憲法29条の財産権保障に抵触しない。また、文書の偽造罪においては、当該文書が公務所または公務員の作成すべき文書としての外形と性質を備えているか否かによって、公文書偽造罪の成否を判断する。
重要事実
被告人は、特定の文書を作成・行使したが、当該文書は公務所または公務員が作成すべき文書(公文書)としての性質を有していた。これに対し、被告人は当該行為が公文書偽造・同行使罪に該当するとされた原判決に対し、事実誤認および法令違反を理由に上告。併せて、刑法19条に基づく没収が財産権を侵害し違憲であると主張した。
事件番号: 昭和36(あ)2043 / 裁判年月日: 昭和36年12月19日 / 結論: 棄却
原判決は、刑法一九条一項三号、二項により押収にかかる「A印」と刻してある丸型印鑑一個を被告人らから没収するとしていること所論のとおりであつて、論旨引用の大審院昭和七年(れ)第六七五号同年七月二〇日判決の趣旨に相反するわけであるが、原判決が刑法一九条を適用して所論の印章を没収している以上、同条一項各号の適用に誤があつても…
あてはめ
1. 没収の合憲性について、最高裁大法廷判例(昭和32年11月27日判決等)の趣旨に照らせば、刑法19条1項の没収は財産権を不当に侵害するものではないと解される。\n2. 公文書偽造罪の成否について、原判決が被告人の行為を公文書偽造・同行使罪にあたると認定した判断は、記録に照らして正当である。被告人が作成した文書は、その形式や内容から公文書としての外形を備えていたものと評価される。
結論
1. 刑法19条1項は憲法29条に違反しない。\n2. 被告人の行為は公文書偽造罪および同行使罪に該当する。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
没収の合憲性については、第三者の所有物没収に関する論点(最判昭37.11.28等)と峻別し、本判決は制度自体の合憲性を確認したものとして位置づける。公文書偽造については、作成権限の有無や文書の外観に基づく「公文書」該当性の判断枠組みとして、実務上引用される。
事件番号: 昭和28(あ)4639 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が定める「公平な裁判所」とは、裁判官が被告人と個人的な利害関係を持つ等の不偏不党性を欠く状態にない組織を指し、当事者が主観的に不公平と感じるか否かによって決まるものではない。 第1 事案の概要:被告人が、原判決の量刑が不当であることを理由として、憲法37条1項の保障する「公平な裁判所…
事件番号: 昭和59(あ)1559 / 裁判年月日: 昭和60年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】余罪を量刑の資料とする際、それが実質的に未起訴の犯罪を処罰する趣旨で考慮されたものでない限り、憲法31条及び39条には反しない。 第1 事案の概要:被告人は有印私文書偽造・同行使等の罪で起訴された。第一審判決は、本件各犯行の犯罪組成物件を没収するとともに、未起訴の事実(余罪)を量刑の資料として考慮…
事件番号: 昭和30(あ)1162 / 裁判年月日: 昭和30年7月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判示事項としての判旨は示されていないが、本件のような状況において有印私文書偽造罪(刑法159条1項)が成立することを肯定した。 第1 事案の概要:本件判決文からは具体的な事実関係は不明であるが、被告人が他人の名義を冒用して有印の私文書を作成した事案であると推認される。 第2 問題の所在(論点):被…
事件番号: 昭和31(あ)153 / 裁判年月日: 昭和31年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】虚偽公文書作成罪(刑法156条)の客体である「公務員がその職務に関し作成すべき文書」とは、公務員が職務権限に基づき作成する文書全般を指し、その内容や形式は限定されない。 第1 事案の概要:被告人が関与した特定の文書(本件文書)について、これが刑法156条に規定される「公務員の職務に関する文書」に該…