葉たばこ収納に際し専売公社地方局長の任命により鑑定人としての職務を執行する権限を有すべき同公社支局技術課長が、その具体的職務の執行を予期し、これに関し不正の利益を収受したときは、たとえ右具体的職務の執行が地方局長の任命といえ条件にかかつていたとしても、収賄罪の成立を妨げるものでない。
公務員の将来命ぜられるべき職務に関し収賄罪の成立する事例。
刑法197条1項
判旨
収賄罪の「職務に関し」の要件については、公務員に職務執行上の裁量の余地が事実上欠けていたとしても、相手方が職務上の手心の余地があると信じ、公務員もその意図を認識していれば認められる。
問題の所在(論点)
公務員に事実上、職務執行上の裁量の余地がない場合であっても、当該行為が「職務に関し」なされたものとして収賄罪が成立するか。
規範
刑法197条の収賄罪における「職務に関し」とは、公務員の職務権限に属する事務であることを要するが、具体的行為が職務執行に際してなされたといえるためには、必ずしも当該公務員に裁量の余地が客観的に存在することまでは必要としない。職務上の権限行使について事実上の影響を及ぼし得る余地があると認識されている状況下で行われたものであれば、職務密接関連性が認められる。
重要事実
日本専売公社の鑑定人である被告人Aは、葉たばこの収納に際し品質の等級鑑定を行っていた。実際には、鑑定において手心を加える余地は事実上なかった。しかし、耕作者らは、下級品については鑑定人の手心次第で等級が上下し得ると信じていた。被告人Aも耕作者らがそのように期待していることを承知した上で、金品を受領した。
あてはめ
本件において、被告人Aは鑑定人として葉たばこの等級を決定する職務権限を有していた。客観的に手心を加える余地がなかったとしても、耕作者らは「5・6級以下の下級品については鑑定人の手心により等級を操作できる」と信じていた。被告人Aもその期待を認識しつつ、鑑定に関連して利益を得ていた。このような主観的・事実上の状況に照らせば、当該行為は鑑定人としての職務に関連して行われたものと評価できる。
結論
被告人の行為は「職務に関し」なされたものといえ、収賄罪が成立する。
実務上の射程
職務権限の有無や裁量の有無が争点となる収賄事案において、形式的な権限だけでなく、贈賄側の期待や公務員の認識といった事実上の職務密接関連性を根拠に職務性を肯定する際の有力な論拠となる。裁量権の逸脱・濫用が困難な準則的な職務であっても、外形的に職務執行に関連していれば足りると解する実務運用を支える判例である。
事件番号: 昭和28(あ)126 / 裁判年月日: 昭和30年2月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公務員による金員の収受が賄賂罪における「職務に関し」たものといえるか否かは、当該公務員の一般的職務権限に属するか否かにより判断される。 第1 事案の概要:被告人は公務員の身分を有しており、第三者から金員を収受した。この金員の授受が、被告人の担当する事務の範囲内、すなわち職務に関連して行われたものか…