一 土地台帳は、刑法第一五七条第一項にいわゆる権利義務に関する公正証書にあたる。 二 土地の分筆申告書に添附するため、県庁から借り受けた図面を縮小変形して架空の地積とした測量図を作成することは、土地家屋調査士法第一二条にいわゆる虚偽の測量にあたる。
一 土地台帳と刑法第一五七条第一項にいわゆる権利義務に関する公正証書。 二 土地家屋調査士法第一二条にいわゆる虚偽の測量にあたるものとされた事例。
刑法第157条1項,土地台帳法1条,土地台帳法5条,土地台帳法10条,土地台帳法26条,土地台帳法施行細則12条2項,土地家屋調査士法12条,土地家屋調査士法22条
判旨
刑法157条1項に規定される「権利義務に関する公正証書」とは、公務員が職務上作成する文書であって、権利義務に関する事実を証明する効力を有するものを指し、土地台帳はこれに該当する。また、分筆は実地において現実に土地を分割した上で登録すべきものであり、虚偽の測量図に基づき架空の地積を登録させる行為は公正証書原本不実記載罪を構成する。
問題の所在(論点)
1.土地台帳は刑法157条1項の「権利義務に関する公正証書」に該当するか。2.実地と異なる架空の地積に基づき分筆の記載をさせる行為は、不実の記載に該当するか。
規範
刑法157条1項の「権利義務に関する公正証書」とは、公務員が職務上作成する文書であって、権利義務に関するある事実を証明する効力を有するものをいう。当該文書の作成にあたり、公務員が申立てに基づき内容を審査せずに記載するか、審査・取捨選択して記載するかを問わない。また、その目的が特に私法上の権利義務を証明するためであるか否かも問わない。土地の分筆については、単に観念的に確定するものではなく、実地において現実に土地を分割し、その登録を行うべきものである。
重要事実
事件番号: 昭和34(あ)608 / 裁判年月日: 昭和36年6月20日 / 結論: 破棄差戻
住民登録法による住民票は、刑法第一五七条第一項にいわゆる「権利義務ニ関スル公正証書」にあたる。
被告人らは、実測面積が21町8反余である開拓地の地積につき、あたかも4町6反余であるかのような虚偽の測量図を作成した。その上で、土地台帳及び不動産登記簿において、当該山林から実測4町6反余の山林が分筆されたかのような不実の記載をさせ、これを行使したとして、公正証書原本不実記載罪等に問われた。
あてはめ
1.土地台帳は公務員が職務上作成し、土地の権利関係等の事実を証明する効力を有する文書であるから、実務上の審査態様や目的の如何にかかわらず「権利義務に関する公正証書」に該当すると解するのが相当である(大審院判例を維持)。2.本件では、実際の開拓地面積が21町8反であるにもかかわらず、図面の面積を縮小変形して架空の地積を算出している。分筆は現実に土地を分割して登録すべきものである以上、このような架空の地積に基づき分筆登記等を行わせる行為は、客観的事実に反する記載をさせるものといえる。
結論
土地台帳は権利義務に関する公正証書に該当する。虚偽の測量図に基づき実態と異なる地積を土地台帳等に記載させる行為は、公正証書原本不実記載罪を構成する。
実務上の射程
公正証書原本不実記載罪における「公正証書」の定義を広く解し、土地台帳の該当性を認めた点に意義がある。不動産登記のみならず土地台帳への不実記載も本罪の対象となることを示す際や、分筆登記における地積の虚偽記載の違法性を論じる際の論拠として使用できる。
事件番号: 昭和34(あ)1610 / 裁判年月日: 昭和36年6月20日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】住民基本台帳法に基づく住民票は、公務員が職務上作成する文書であって権利義務に関するある事実を証明する効力を有するものであるから、刑法157条1項にいう「権利義務ニ関スル公正証書」に該当する。 第1 事案の概要:韓国籍を有し日本国籍を持たない被告人及びその家族7名が、外国人登録法の適用を受け住民登録…
事件番号: 昭和38(あ)2436 / 裁判年月日: 昭和39年6月2日 / 結論: 棄却
被告人は登記簿上の建物所有名義人甲との間に現実の売買の事実がないのに拘らず、売買契約が成立した旨虚偽の証書を作成し、売買を登記原因として所有権移転登記を申請し、その旨登記簿原本に記載させるなど原判示所為に出たものであるときは、たとえ、右建物の真実の所有者が被告人であり、甲が将来その登記名義を被告人に変更することを予め諒…
事件番号: 昭和31(あ)2416 / 裁判年月日: 昭和35年1月11日 / 結論: 棄却
たとい不動産の真実の所有者であつても、登記簿上他人名義で登記されている不動産につき、その印鑑を保管しているのを奇貨としてこれを使用し、その承諾がないのに、該不動産を同人から自己に売却した旨の売渡証書を作成し、これを原因としかつ自ら作成した同人名義の委任状を利用し、自己に所有権の移転を受けた旨虚偽の登録申請をなし、登録原…
事件番号: 昭和46(あ)2696 / 裁判年月日: 昭和48年3月15日 / 結論: 棄却
住民基本台帳法に基づく住民票の原本は、刑法一五七条一項にいう「権利、義務ニ関スル公正証書ノ原本」にあたる。