控訴裁判所が何ら事実の取調をしないで第一審判決より重い刑を科しても(本件は第一審が公職選挙法第二五二条第三項を適用したのを第二審でみずから何ら事実の取調をすることなく同規定を適用しないことにした場合である。)刑訴第四〇〇条但書に違反しない。
刑訴法第四〇〇条但書に違反しない事例。
刑訴法400条但書,公職選挙法252条3項
判旨
控訴裁判所が事実の取調べを行わずに第一審判決よりも重い刑を科すことは、刑事訴訟法400条但書に違反せず、適法である。
問題の所在(論点)
控訴裁判所が、事実の取調べを別途行うことなく、第一審判決よりも重い刑を科して自判することが、刑事訴訟法400条但書の許容する範囲内か。
規範
控訴裁判所が第一審判決を破棄して自判(刑事訴訟法400条本文)を行う際、新たな事実の取調べを行うことなく、第一審が認定した事実を前提として、第一審判決よりも重い刑を科すことは、同条但書に違反しない。
重要事実
被告人が公職選挙法違反等に問われた事案において、第一審判決に対し控訴がなされた。控訴審(原判決)は、第一審が適用した公職選挙法252条3項(公民権停止の不適用規定)を破棄し、事実の取調べを行うことなく同規定を適用しないこととした。その結果、事実上第一審よりも重い刑(公民権の停止)を科す形となったため、弁護人が刑訴法400条但書違反等を理由に上告した。
あてはめ
最高裁判所は、大法廷判例(刑集9巻8号1189頁等)を引用し、控訴裁判所が事実の取調べを経ずに第一審より重い刑を科しても、直ちに刑訴法400条但書に違反するものではないとした。本件においても、原審が第一審の認定した事実に基づき、法規の適用(公職選挙法252条3項の不適用)を判断して量刑を決定した手続に違法はないと判断される。反対意見は、事実の取調べなしに不利益な自判を行うことを否定したが、法廷の多数意見は従来通りの判例を維持した。
結論
本件上告を棄却する。控訴裁判所による事実の取調べを欠いた重刑への変更自判は、刑訴法400条但書に違反しない。
実務上の射程
控訴審における自判の限界に関する重要判例。事実関係に変更がない場合、控訴審は独自の法的評価や量刑判断により第一審より重い刑を科すことが可能であることを示している。答案上は、不利益変更禁止の原則(刑訴法402条)との関係に留意しつつ、検察官控訴がなされている場面での控訴審の権限として活用する。
事件番号: 昭和29(あ)3748 / 裁判年月日: 昭和30年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴裁判所が刑訴法400条但書に基づき破棄自判を行う際、訴訟記録や第一審の証拠により直ちに判決できると認める場合は、必ずしも新たに事実の取調べを要しない。 第1 事案の概要:被告人が、第一審判決の事実誤認や量刑不当を理由に控訴した事案において、控訴審(原審)は第一審の訴訟記録を書面審査し、公開の審…