被告人が昭和三一年一一月三日頃その自宅において、Aに対し長野県北佐久郡a町大字b字cd番地の五筆の土地一三、九六三坪は自己所有のものであるから、代金完済後は移転登記をする旨虚構の事実を申し向けてその旨誤信させ、同人から代金名義で即時七〇万円、同年一二月三日頃七〇万円、同月七日頃四〇万円の交付を受けて、これを騙取した旨の訴因に対し、被告人が同年一二月五日頃、右自宅において、右Aに対し右土地は第三者の所有に属しこれを買い受けられる見込のないことを秘し、恰もその見込があるように装い、同人をして被告人が右土地の所有者から取得できる見込があり、代金を完済すれば直ちに所有権移転登記を受けられるものと誤信させ、同月七日頃右Aから売買代金の内金名下に四〇万円の交付を受けてこれを騙取した旨の事実を認定するには、訴因変更の手続を経ることを必要としない。
詐欺罪について訴因の変更を必要としない事例。
刑訴法312条,刑法246条1項
判旨
本判決は、弁護人が主張する判例違反や訴訟法違反について、引用された判例が事案を異にするため適切でないこと、および事実誤認等の主張が刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないことを理由に、上告を棄却したものである。
問題の所在(論点)
弁護人が主張する判例違反の存否、および事実誤認・訴訟法違反の主張が刑事訴訟法405条に定める上告理由(特に同条2号、3号)に該当するか。
規範
刑事訴訟法405条の上告理由に関して、判例違反を主張する場合には、引用する判例が当該事案に対して適切に適用し得るものであることが必要であり、また単なる事実誤認や訴訟法違反の主張は適法な上告理由を構成しない。
重要事実
被告人側の弁護人が、原判決には判例違反および訴訟法違反があるとして上告を申し立てた。しかし、上告趣意で引用された判例は本件とは事案を異にするものであった。また、第二点として主張された内容は、事実誤認および単なる訴訟法違反を指摘するものであった。
あてはめ
第一点の判例違反については、引用された判例が本件と事案を異にしているため、前提を欠くものと判断される。第二点の事実誤認および単なる訴訟法違反の主張については、最高裁判所が審理すべき刑事訴訟法405条所定の具体的な上告事由(憲法違反または判例違反)のいずれにも該当しない。
結論
本件上告は刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないため、同法414条、386条1項3号により棄却される。
実務上の射程
上告趣意書の作成において、判例違反を理由とする場合は事案の類似性を厳格に検討すべきであること、および405条各号に該当しない主張は門前払い(決定棄却)の対象となることを示す実務上の注意喚起として機能する。
事件番号: 昭和29(あ)4208 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、被告人らの上告趣旨が事実誤認や単なる法令違反、あるいは適切でない判例引用に基づくものであり、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとして棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cおよび各弁護人は、第一審・控訴審の判決に対し、判例違反、憲法違反、事実誤認、法令違反等を主張し…