関税法第一一八条にいわゆる犯人には、行為者のみならず、いわゆる両罰規定により処罰される法人または人をも包含するものと解するのを相当とする。
関税法第一一八条にいわゆる犯人の意義。
関税法118条1項,関税法118条2項,関税法117条,刑法8条,刑法9条,刑法20条
判旨
関税法118条1項柱書きにいう「犯人」には、両罰規定により処罰される法人も含まれ、また、同条2項による没収不能の際の追徴は、犯罪に関与した者であれば物件の所有者でない者に対しても科すことができる。
問題の所在(論点)
関税法118条にいう「犯人」に両罰規定の適用を受ける法人が含まれるか。また、犯罪貨物の没収が不能な場合において、当該貨物の所有者でない犯人に対しても追徴を科すことができるか(追徴の法的性質と範囲)。
規範
関税法118条にいう「犯人」とは、直接の実行行為者のみならず、両罰規定の適用を受ける法人および人をも含むと解する。また、同条に基づく追徴は、単に犯則者が得た不当利益の剥奪のみを目的とするものではなく、同法違反の罪に関与した者に対する刑罰的性格を有する制裁である。したがって、没収すべき物件を没収できない場合に科される追徴は、犯罪に関与した犯人全員に対して科すことが可能である。
重要事実
被告人Aおよび被告会社Bは、関税法違反の犯罪事実に関与したとして起訴された。第一審判決は、関税法118条に基づき、行為者である被告人Aと、両罰規定の適用を受ける被告会社Bの双方に対し、犯罪貨物の没収に代わる追徴を言い渡した。これに対し弁護人は、追徴は犯罪行為者本人に対してのみ科すべきであり、法人である被告会社に科すのは違法である、また所有者でない者への追徴は不当であると主張して上告した。
事件番号: 昭和37(あ)1866 / 裁判年月日: 昭和39年7月1日 / 結論: 棄却
一 法人の代表者に対する関税法違反被告事件において、同法第一一八条第一項により、第三者たるその法人所有の犯罪貨物を没収するにあたつては、被告人に対して犯罪事実に関する弁解、防禦の機会が与えられているかぎり、改めてその法人に対してこれらの機会を与えることを要しない。 二 関税法第一一八条第二項にいわゆる犯人とは、犯罪貨物…
あてはめ
まず、関税法118条の「犯人」には、業務に関して違反行為があった場合に処罰される法人も当然に含まれる。次に、追徴の性質について、判決はこれを「刑罰的意味を有する制裁」と捉える。追徴は本来没収に代わる処分であるが、没収が不能な場合には制裁・抑止の観点から、犯罪に関与した全ての者に対し、独立して追徴を科すことができる。本件において、被告人Aは実行行為者であり、被告会社Bは両罰規定により処罰される主体であるから、両者は共に同条の「犯人」に該当する。したがって、対象貨物が被告会社の所有であったとしても、犯罪に関与した両者に対し各別に追徴を言い渡した判断は正当である。
結論
被告会社Bおよび被告人Aの双方に対し追徴を科した原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
関税法における追徴の刑罰的性格を明示した重要判例である。答案上は、没収・追徴が「不当利得の剥奪」に尽きるのか「刑罰的制裁」を含むのかという論点で、後者の立場(判例)を導く際に用いる。法人処罰の文脈でも、118条の適用対象を広げる論拠となる。ただし、共犯者全員から全額を追徴することの過酷さから、後の判例では裁量による制限も認められている点に注意を要する。
事件番号: 昭和38(あ)1348 / 裁判年月日: 昭和40年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条1項及び2項に規定する「犯人」とは、密輸品の所有者に限定されず、犯罪の実行行為者、教唆者、幇助者の全員を指す。また、没収不能の場合の追徴は、犯人が連帯してその価額を納付すべき義務を負うと解される。 第1 事案の概要:被告人A及び被告人Bらは、関税法違反(密輸)の罪に問われた。原審は、…
事件番号: 平成4(あ)499 / 裁判年月日: 平成5年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】関税法118条2項にいう「犯人」とは、密輸入された犯罪貨物等の所有者や占有者に限定されず、当該犯罪に関与したすべての共犯者を含む。この解釈は憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBが、関税法違反(密輸入等)の罪に問われた事案。原判決において、犯罪貨物等を没収できないことに代えて…