身体傷害により人を死に致した後、さらに死体を遺棄するにおいては、傷害致死罪のほかに死体遺棄罪を構成する。
傷害致死後における死体遺棄の罪責。
刑法205条,刑法190条,刑法45条
判旨
傷害罪は結果犯であり、暴行の認識があれば傷害の意思を要しない。また、傷害致死罪の成立には、暴行・傷害と死亡との間に因果関係があれば足り、致死の結果に対する予見可能性は不要である。
問題の所在(論点)
1. 傷害罪の成立に傷害の意思を必要とするか(暴行の故意で足りるか)。 2. 傷害致死罪の成立に、致死の結果に対する予見(可能性)を必要とするか。
規範
1. 傷害罪(刑法204条)は結果犯であり、その成立には傷害の意思(生理的機能の毀損を意図すること)を必要とせず、傷害の原因たる暴行についての認識があれば足りる。 2. 傷害致死罪(刑法205条)の成立には、傷害と死亡との間に因果関係が存在すれば足り、結果としての致死についての予見可能性は不要である(結果的加重犯における過失不要説)。
重要事実
被告人は、被害者Aに対して暴行を加え、これによってAに傷害を負わせ、死に至らしめた。弁護側は、傷害の意思や死亡の結果に対する予見がなかったことを理由に犯罪の成立を争い、上告した。また、被告人の精神状態について精神鑑定が却下された点や量刑についても争われた。
あてはめ
1. 被告人は本件暴行そのものを十分に認識していた。傷害罪は結果犯であるから、暴行の故意さえあれば、その結果生じた傷害について傷害の意思がなくても責任を負う。 2. 被告人の暴行と被害者Aの傷害および死亡との間には因果関係が認められる。結果的加重犯である傷害致死罪においては、基本犯である暴行・傷害と重い結果である死亡との間に因果関係があれば足り、致死の結果を予見していたか否かを問わず、その責任を免れることはできない。
結論
傷害致死罪が成立する。被告人に暴行の認識があり、暴行と死亡の間に因果関係が認められる以上、致死の結果についての予見がなくとも傷害致死の罪責を負う。
実務上の射程
結果的加重犯全般における過失の要否に関するリーディングケースである。答案上は、結果的加重犯の成立要件として「基本犯の故意」と「因果関係」のみを挙げ、結果に対する過失を不要とする立場(判例)を論証する際に引用する。特に傷害致死罪において、故意(暴行)から直接結果(死亡)が発生した流れを記述する際に不可欠な規範となる。
事件番号: 昭和25(れ)369 / 裁判年月日: 昭和25年6月27日 / 結論: 棄却
傷害罪又は傷害致死罪の成立に必要な主観的要件としては、暴行の意思を必要とし、且つ之を以つて充分である。暴行の意思以外に、さらに傷害の意思を要するものではない。