債務者が債権者を欺罔し債務の弁済の猶予を得たときは、刑法第二四六条第二項の詐欺罪が成立する。
債権者を欺罔し債務の弁済の猶予を得た場合と詐欺罪の成否。
刑法246条2項
判旨
詐欺罪における既遂時期について、欺罔行為によって相手方が錯誤に陥り、その意思に基づき財物を交付したことをもって既遂となるとした原判決を正当として是認した。
問題の所在(論点)
詐欺罪における既遂時期(財物の交付をもって既遂となるか)。
規範
刑法246条1項の詐欺罪は、欺罔行為により相手方を錯誤に陥らせ、その錯誤に基づく処分行為によって財物の占拠が移転した時点で既遂に達する。財物の交付があれば、その後の最終的な利得の成否を問わず、交付時点をもって既遂と解すべきである。
重要事実
本件において、被告人は人を欺いて財物を交付させた。原判決は、この犯行について詐欺罪の既遂が成立すると判断した。これに対し、被告人側は事実誤認や量刑不当等を理由に上告したが、具体的な犯行事実の詳細は本決定文からは不明である。
あてはめ
事件番号: 昭和27(あ)6498 / 裁判年月日: 昭和28年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐欺罪における欺罔行為は、必ずしも被害者に経済的損失を負わせることのみを目的とするものではなく、被害者が真実を知っていれば金品を交付しなかったであろう重要な事項について偽ることを含む。 第1 事案の概要:被告人らは共謀の上、特定の商品や権利の販売において、その性質や価値について虚偽の事実を告げた。…
本件では、被告人の欺罔行為によって相手方が財物を交付した事実が認められる。詐欺罪は、相手方の処分行為によって財物が自己または第三者の占有に移ったことをもって完成する犯罪である。したがって、相手方が財物を交付した事実がある以上、その時点で既遂に達したものと評価される。
結論
被告人の行為は詐欺罪の既遂に該当し、原判決の判断は正当である。
実務上の射程
詐欺罪の既遂時期が「交付時」であることを確認する極めて簡潔な判例である。答案上は、財物の占有が移転した事実(交付事実)を認定した直後に、本判例の趣旨を引いて既遂を導く形で活用する。実行の着手と既遂の区別、あるいは共犯の介入時期を検討する際の基礎となる。
事件番号: 昭和33(あ)122 / 裁判年月日: 昭和36年7月4日 / 結論: 棄却
原判決は、本件詐欺被害者等は何れも、本件売買の目的物(註。骨董品)は判示元公爵家所蔵品である旨の被告人の虚言を信用したためこれを買受けたものであつて、そうでなければ本件売買は行われなかつたものであると認定しており、右認定に誤りはないこと記録に徴して明らかである。されば右の如く、真実を告知するときは相手方が金員を交付しな…
事件番号: 昭和32(あ)2385 / 裁判年月日: 昭和35年10月26日 / 結論: 棄却
焼付鍍金を施した仏像がそれ相当の価値はあるとしても、原審是認の一審判示の様に真実に反する誇大な事実を告知して相手方を誤信させ金員の交付を受けた場合は、その交付を受けた金員全体につき詐欺罪が成立するものと解すべきである。