労働基準法第三三条または第三六条所定の条件を充足していない違法な時間外労働ないしは休日労働に対しても、使用者は同法第三七条第一項により割増賃金の支払義務があり、その義務を履行しないときは同法第一一九条第一号の罰則の適用を免れない。
違法な時間外労働等についても割増賃金不払罪が成立するか。
労働基準法33条,労働基準法36条,労働基準法37条1項,労働基準法119条1号
判旨
労働基準法37条1項に基づく割増賃金の支払義務は、33条や36条等の手続を経た適法な時間外労働に限らず、手続を欠いた違法な時間外労働に対しても発生し、不払には罰則が適用される。
問題の所在(論点)
労働基準法37条1項の割増賃金支払義務、および同法119条1号の罰則は、同法33条や36条の手続を遵守しない「違法な時間外労働」に対しても適用されるか。同条項の「第33条若しくは第36条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合」という文言の解釈が問題となる。
規範
労働基準法37条1項は、同法33条(災害時等の時間外労働)または36条(労使協定による時間外労働)の条件を充足した適法な労働のみならず、それらの条件を充足しない違法な労働に対しても割増賃金の支払義務を課すものである。したがって、不払を処罰する同法119条1号も、時間外労働が適法か違法かを問わず適用される。
重要事実
被告人は株式会社の代表取締役として、労働基準法33条所定の行政官庁の許可や36条に基づく労使協定等の除外事由がないにもかかわらず、女子労働者12名に対し延べ約1175時間の時間外労働および休日労働をさせた。被告人はこれに対し、法廷の割増賃金の一部(約1万6324円)を支払わなかったため、労働基準法37条1項違反として起訴された。
あてはめ
適法な時間外労働について割増賃金の支払義務が認められるのであれば、法の規制に違反した違法な時間外労働の場合には、労働者保護の観点から一層強い理由でその支払義務が認められるべきである(事理の当然)。したがって、37条1項は33条・36条の条件充足の有無にかかわらず支払義務を認めた趣旨と解され、その履行を確保するための罰則(119条1号)も同様に適用される。本件被告人が法の手続を経ずに時間外労働をさせ、割増賃金を支払わなかった行為には、同罰則が適用されるべきである。
結論
違法な時間外労働についても割増賃金の支払義務は発生し、これに違反した場合には労働基準法119条1号の罪責を負う。無罪とした原判決は破棄される。
実務上の射程
「33条または36条の規定により」という文言を、適法性の要件ではなく「時間外労働等が行われた場面」を指すものと広く解釈し、脱法行為を許さないとする射程を持つ。民事上の割増賃金請求権の発生根拠としても、刑事上の処罰根拠としても、違法な残業であることを理由に否定することはできないという実務上の鉄則を示す判例である。
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