酒税法違反の罪につき懲役刑を言い渡した簡易裁判所の確定判決は、裁判所法第三三条第二項に違反するもので、これに対する非常上告は理由がある。
酒税法違反の罪につき懲役刑を言い渡した簡易裁判所の確定判決と非常上告。
酒税法45条,酒税法56条1項4号,裁判所法33条,刑訴法458条1号
判旨
簡易裁判所は、裁判所法33条2項但書に該当する場合を除き禁錮以上の刑を科すことができず、懲役刑が相当と判断する際は地方裁判所へ移送すべきである。これに反して懲役刑を言い渡した判決は法令違反であり、被告人の不利益になる場合は非常上告により破棄を免れない。
問題の所在(論点)
簡易裁判所が裁判所法33条2項但書の例外に該当しない罪について、懲役刑を選択・宣告することの可否、および当該違反があった場合の救済措置が問題となる。
規範
簡易裁判所が酒税法違反等の罪(選択刑に罰金があるもの)を審理する場合、裁判所法33条2項により、原則として禁錮以上の刑を科することができない。同条項但書の例外(一部の罪)に当たらない事案において禁錮以上の刑を処断すべきと認める場合は、同法33条3項及び刑事訴訟法332条に基づき、事件を地方裁判所に移送しなければならない。
重要事実
被告人は酒税法違反(無免許製造酒の譲渡・所持)の罪で鹿屋簡易裁判所に起訴された。原審は、法定の除外事由に該当しない譲渡行為18回分について、酒税法56条1項4号を適用して懲役3年(執行猶予3年)を言い渡し、所持行為については罰金3,000円を言い渡した。判決はそのまま確定したが、検事総長が裁判所法の規定に反するとして非常上告を申し立てた。
あてはめ
本件の酒税法56条1項4号違反の罪は、裁判所法33条2項但書の規定する禁錮以上の刑を科し得る例外的な罪には該当しない。したがって、簡易裁判所が本罪について罰金刑ではなく懲役刑を選択して言い渡すことは、同条2項の職分上の制限に直接違反する。懲役刑が相当であれば地方裁判所へ移送すべきであり、自ら懲役刑を宣告した原判決は法令に違反し、かつ被告人に不利益な裁判といえる。
結論
原判決中、懲役刑を言い渡した部分は裁判所法違反であり、被告人に不利益である。よって当該部分を破棄し、最高裁判所が自ら罰金刑を言い渡す自判を行う。
実務上の射程
簡易裁判所の事物管轄と量刑権限の限界を画した判例。答案上は、簡易裁判所の判決に重大な法令違反がある場合の非常上告(刑訴法454条以下)の具体例として、また裁判所法上の移送手続(刑訴法332条)の必要性を論じる際に引用すべき射程を持つ。
事件番号: 昭和36(あ)2391 / 裁判年月日: 昭和37年4月13日 / 結論: 棄却
旧酒税法(昭和一五年法律第三五号)六六条本文が罰金刑ついて刑法六六条の規定を排除したからといつて、憲法一三条、七六条三項に違反するということはできない。