原本に代えて証拠書類の謄本の取調請求があつた場合、被告人および弁護人がこれを証拠とすることに同意し、且つ証拠調をすることに異議がない以上、謄本を証拠とするため証拠調をしても違法でない。
原本に代えて証拠書類の謄本の取調請求があつた場合と証拠調
刑訴法309条,刑訴法326条,刑訴法310条
判旨
主観的構成要件については、公判廷外の被告人の自白のみであっても、客観的構成要件に他証があり、かつ自白の真実性が保証される場合には、これらを総合して有罪とすることができる。
問題の所在(論点)
主観的構成要件(知情等)の認定において、公判廷外の被告人の自白以外に独立した補強証拠が必要か、あるいは客観的事実の他証と自白の真実性保証があれば足りるか。
規範
憲法38条3項及び刑訴法319条2項にいう補強証拠の要件に関し、賍物性の知情のような主観的構成要件要素については、直接の証拠が公判廷外の被告人の自白のみであっても、客観的構成要件たる事実に他証があり、かつ右自白の真実性が保証されていると認められるときは、これらを総合して犯罪事実全体を認定することができる。
重要事実
被告人が賍物牙保罪等の容疑で起訴された事案において、客観的構成要件(賍物の収受等)については客観的な証拠等による証明があったが、賍物であることの「知情」(主観的構成要件)については、公判廷外における被告人の自白以外に直接的な証拠が乏しかった。弁護人は、主観的事実についても補強証拠が必要であるとして、自白のみによる認定を憲法違反・訴訟法違反であると主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人は賍物の知情を公判廷外で自白している。この自白については、客観的構成要件である賍物の授受事実等について別途確かな証拠が存在しており、その客観的事実との合致等から、自白の真実性が十分に保証されている。したがって、主観的要素について個別の補強証拠がなくても、他証がある客観的事実と、真実性が保証された自白を総合すれば、犯罪事実の全体を適法に認定し得る。また、証拠書類の謄本の取調についても、被告人及び弁護人が同意し、異議なく証拠調べが行われている以上、適法な手続といえる。
結論
主観的構成要件については、客観的事実の他証により自白の真実性が保証される限り、自白のみで認定しても憲法38条3項等に違反しない。
実務上の射程
補強証拠の範囲に関する「実質説」に近い立場を示した判例である。答案上は、補強証拠が必要な範囲を論じる際、客観的事実の他証があれば主観的事実については自白のみで足りるとする根拠(自白の真実性担保)として引用する。
事件番号: 昭和25(あ)3394 / 裁判年月日: 昭和26年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪の主観的態様である知情等の点については、直接の補強証拠がなくても、客観的構成要件に該当する事実について補強証拠があり、自白の真実性が担保されるのであれば、自白のみで認定できる。 第1 事案の概要:被告人が、ある犯罪事実についてその主観的要素(知情の点)を自白していたが、当該主観的要素を直接裏付…