大赦令により赦免され、刑の言渡の効力を失つた前科であつても、第一審においてその前科調書を証拠として取り調べ、右受刑の事実を審問し、または第二審においてこれを前審の量刑当否の判断の資料に供したからといつて、違法ということはできない。
大赦令により赦免され、刑の言渡の効力を失つた前科を量刑当否の判断の資料に供すること等の適否
大赦令(昭和20年勅令579号)1条1項44号,恩赦令(大正元年勅令23号)3条1号,恩赦法(昭和22年法律20号)3条1号,刑訴法381条
判旨
刑の消滅(刑法34条の二1項等)は、刑の言い渡しの法律上の効果を喪失させるものであり、犯罪および処罰の事実自体を消滅させるものではない。したがって、消滅した前科を量刑の資料として考慮することは、適法である。
問題の所在(論点)
刑の消滅(刑法34条の二1項)や大赦による赦免により、刑の言い渡しが効力を失った場合において、当該前科の事実を量刑の資料として考慮することが許されるか。
規範
刑法34条の二1項等の規定により刑の言い渡しが効力を失うことは、あくまで法律上の効果の問題である。被告人が以前に犯罪により処罰されたという歴史的事実そのものが消滅するわけではないため、消滅した前科であっても量刑の判断資料とすることができる。
重要事実
被告人の前科について、第一審において前科調書を証拠として取り調べ、受刑の事実を審問した。被告人は、当該前科が刑法34条の二1項所定の期間経過、または大赦令による赦免によって既に刑の言い渡しの効力を失っているものであると主張し、これを量刑の資料に供したことの違法を訴えて上告した。
あてはめ
本件において、被告人の前科は期間経過や大赦により法律上の効力を失っている。しかし、量刑の判断は、被告人の経歴や性格、再犯の危険性などを総合的に考慮して行われるべきものである。前科の効力消滅は「法律上の資格制限」等を解除する効果にとどまり、過去に犯罪を犯したという事実は動かない。したがって、裁判所が前科調書を取り調べ、被告人の経歴の一部として受刑の事実を量刑判断に供したことは、適法な裁量の範囲内といえる。
結論
消滅した前科を量刑の資料に供することは違法ではなく、本件の上告は棄却される。
実務上の射程
刑事実務において、前科の効力が消滅していても、情状に関する証拠(前科調書等)として提出・採用されることを正当化する根拠となる。ただし、あくまで情状資料としての考慮に限定され、累犯加重(刑法56条等)の基礎とすることはできない点に注意が必要である。
事件番号: 昭和32(あ)379 / 裁判年月日: 昭和32年6月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売春の周旋行為を処罰することは、売春業の経営者も同様に処罰される以上、憲法14条に反しない。また、求職者が直接契約する場合と周旋人を介する場合で処罰の有無に差異がない以上、平等権侵害の問題は生じない。 第1 事案の概要:売春婦を周旋した行為について処罰された被告人が、売春業を営む経営者が処罰されな…
事件番号: 昭和27(あ)3419 / 裁判年月日: 昭和29年3月11日 / 結論: 棄却
刑法第三四条の二第一項に「刑ノ言渡ハ其効力ヲ失フ」とあるのは、刑の言渡に基く法的効果が将来に向つて消滅するという趣旨であつて、その刑の言渡を受けたという既往の事実そのものを、量刑判断にあたつて参酌することは、同条項に違反しない。