郵便集配人は刑法上の公務員である。
郵便集配人と公務員。
刑法7条1項,郵政省設置法(昭和23年法律244号)4条5号,郵政省設置法(昭和23年法律244号)12条1項,郵政省設置法(昭和23年法律244号)12条3項,郵政省設置法(昭和23年法律244号)13条8項,郵政省設置法(昭和23年法律244号)27条,郵政省職員定数規程(昭和27年9月24日郵政省令31号)1項「地方支分部局郵便局の欄」,郵政省職員定数規程(昭和27年9月24日郵政省令31号)2項,逓信部内雇員規程(昭和22年3月18日逓信大臣公達51号)3条,逓信部内雇員規程(昭和22年3月18日逓信大臣公達51号)別表第2,郵政省職務規程(昭和24年9月5日公達39号)7条2号,郵政省職務規程(昭和24年9月5日公達39号)別表第1「任命権委任区分」,郵便局組織規程(昭和25年2月1日公達9号)1条,郵便局組織規程(昭和25年2月1日公達9号)別表第1「京都中央郵便局」,食糧管理法施行規則47条,昭和28年6月12日岡山県告示478号
判旨
刑法上の「公務員」とは、法令に基づき公務に従事する職員を指し、単純な肉体的労務を超えた事務を担当する者は、職制上の名称を問わずこれに該当する。郵便集配員は、郵便法等に基づく精神的労務を伴う事務に従事しているため、刑法上の公務員に当たると判断された。
問題の所在(論点)
刑法95条1項の公務執行妨害罪の客体である「公務員」(刑法7条1項)の意義、特に郵便集配員のように実働的な業務に従事する者が、単純な肉体的労務者として除外されるか、あるいは法令に基づく公務員として含まれるかが問題となった。
規範
刑法7条1項にいう「法令ニ依リ公務ニ従事スル職員」とは、公務に従事することが法令の根拠に基づく者を意味し、単純な機械的・肉体的労務に従事する者は含まれない。もっとも、当該職制等において「職員」と呼ばれる身分を持つか否かは問わない。判断に際しては、その事務の性質が精神的労務に属するか、あるいは単なる肉体的・機械的労働に止まるかによって決すべきである。
重要事実
被告人は、郵便集配員Aがその職務を執行するに当たり、同人に対して暴行を加えた。郵便集配員Aは、民事訴訟法、郵便法、郵便取扱規程等の諸法令に基づき、郵便物の取集めや配達といった事務に従事していた。被告人は、当該郵便集配員が刑法上の公務員には該当しないとして、公務執行妨害罪の成否を争った。
あてはめ
本件郵便集配員Aの担当事務は、単に郵便物の取集めや配達という単純な肉体的・機械的労働に止まるものではない。民訴法や郵便法等の諸規定に基づき、郵便物の適正な送達や証明等に関わる「精神的労務」に属する事務を併せ担当している。したがって、職制上の名称にかかわらず、仕事の性質から見て「法令に基づき公務に従事する職員」に該当すると評価される。
結論
郵便集配員は刑法7条の公務員に該当する。したがって、その職務執行中に暴行を加えた被告人の行為は、刑法95条1項の公務執行妨害罪を構成する。
実務上の射程
「公務員」の定義に関するリーディングケースであり、公務員の範囲を形式的な職制ではなく、法令上の根拠と事務の性質(精神的労務の有無)から実質的に判断する枠組みを示した。答案上は、現職の公務員だけでなく、委託を受けた公務に従事する者の公務員性を論じる際の基準として活用できる。
事件番号: 昭和38(あ)515 / 裁判年月日: 昭和39年8月25日 / 結論: 棄却
鉄道公安職員は、日本国有鉄道法第三四条第一項により法令により公務に従事する者とみなされ、犯罪捜査のほか、鉄道公安職員基本規程により、鉄道業務の円滑な遂行のためこれを侵害するものを排除するなど警備的職務に従事するものであるから、その職務の執行にあたり、これに対して暴行を加えたときは、公務執行妨害罪が成立するものと解するの…
事件番号: 昭和38(あ)1203 / 裁判年月日: 昭和39年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法95条の公務執行妨害罪は、公務員個人を特別に保護するものではなく、公務員によって執行される公務そのものを保護法益とするものである。 第1 事案の概要:被告人らは、公務員の職務執行に際して暴行または脅迫を加えたとして、公務執行妨害罪等の刑責を問われた。これに対し弁護側は、同罪が公務員を不当に優遇…
事件番号: 昭和30(あ)3951 / 裁判年月日: 昭和31年7月5日 / 結論: 棄却
刑法九五条は公務員を特別に保護する規定ではなく、公務員によつて執行される公務を保護するものであるから、論旨は同条の保護法益に関する誤つた見解に立つものであつて、違憲の主張はその前提を欠くものである。(最高裁判所判例集七巻一〇号一八八三頁参照)