犯人自ら当該物件を盗んだことを認めているのであるから、盗難にあつたことは間違いないものと思う旨の記載がある被害顛末書でも、それに詳記されている被害物件の保管場所、保管者、保管状況等によつては、その補強証拠としての価値を認めて差支えない。
補強証拠としての価値を認め得る一事例
刑訴法318条,刑訴法319条2項,刑訴法321条,憲法38条3項
判旨
被告人の公判廷における自白のみによる有罪判決は憲法38条3項に違反しない。また、被害物件の保管状況等を詳述した被害顛末書は、自白に対する補強証拠となり得る。
問題の所在(論点)
1. 公判廷における自白のみで有罪を認定することは憲法38条3項に違反するか。 2. 被害物件の保管状況等を詳述した被害顛末書は、自白の補強証拠となり得るか。
規範
憲法38条3項は「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」と規定するが、これにいう「自白」には、公判廷における自白は含まれない。また、補強証拠は、自白の真実性を担保するに足りる証拠であれば足り、客観的事実の一部を裏付ける書面(被害顛末書等)もこれに該当し得る。
重要事実
被告人は窃盗の公訴事実について第一審の公判廷で自白したが、第一審判決はこれに基づき有罪を宣告した。弁護人は、この自白のみによる認定は憲法38条3項に違反し、また証拠として採用された被害顛末書は補強証拠にならないと主張して上告した。
あてはめ
憲法38条3項が自白のみによる有罪を禁じた趣旨は、強制等による虚偽の自白に基づく誤判を防止する点にあるが、裁判官の面前でなされる公判廷の自白については特段の保障が及ぶため、これのみによる認定も許容される。また、本件被害顛末書は、被害物件の保管場所、保管者、保管状況等を詳述しており、被告人の公判廷における自白の真実性を補強するに足りる客観的関連性を有しているといえる。
結論
公判廷の自白による有罪認定は憲法38条3項に違反しない。また、被害顛末書を補強証拠として自白の真実性を認めた判断は正当である。
実務上の射程
刑事訴訟法319条2項が「公判廷における自白であると否とを問わず」補強証拠を必要としている点に注意。本判決は憲法上の解釈を示すものであり、実務上は刑訴法の規定に従い、公判廷の自白であっても被害顛末書等の補強証拠を用いて認定を行うべきである。
事件番号: 昭和31(あ)2989 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白のみによる有罪判決の禁止(憲法38条3項)に関して、自白以外の物的証拠や公判廷における証言が存在する場合には、これらを補強証拠として事実を認定することができる。 第1 事案の概要:被告人は、司法警察員および検察事務官に対して犯罪事実を自白していた。第一審判決は、この自白のほかに、被害者Eの被害…