起訴状に公訴事実として、(一)被告人甲は昭和三〇年一月一六日丙方において同人に対しヘロイン一袋を代金一万二千円で譲渡し、(二)被告人乙は同日前記甲丙間のヘロイン授受に際し、丙の依頼を受けて、甲方において同人より右ヘロイン一袋を受領し、これを丙方で同人に手交し、以つて丙のヘロイン譲渡行為を容易ならしめてこれを幇助したものである旨記載されていた場合に、第一審裁判所が、被告人甲は昭和三〇年一月一六日自宅において乙に対しヘロイン一袋を代金一万二千円で譲渡したものである旨の事実を認定したとしても、該認定事実と被告人甲に対する公訴事実との間にはその同一性を失うものではない。
公訴事実の同一性の認められる事例。
刑訴法312条,麻薬取締法12条1項,麻薬取締法64条
判旨
本決定は、訴訟法違反を主張する上告について、引用された判例が事案を異にするため適切ではなく、実質的に刑訴法405条の上告理由に当たらないとして棄却したものである。
問題の所在(論点)
弁護人が主張する「判例違反」が、実質的に「訴訟法違反」の主張に留まる場合、刑訴法405条の上告理由として認められるか。また、職権による破棄事由(刑訴法411条)が存在するか。
規範
刑訴法405条各号に規定された上告理由(憲法違反、判例違反)に該当しない実質的な訴訟法違反の主張は、適法な上告理由とは認められない。また、刑訴法411条(職権による判決取消)を適用すべき顕著な正義に反する事由がない限り、原判決は維持される。
重要事実
弁護人が、原審の判断に訴訟法違反があるとして判例違反を理由に上告を申し立てた事案。しかし、弁護人が引用した判例は本件とは事案を異にするものであった。
あてはめ
弁護人が引用した各判例は、本件とは事案を異にするため適切ではない。したがって、上告趣意の実質は、刑訴法405条に規定のない単なる訴訟法違反の主張に帰する。また、記録を精査しても、職権で判決を破棄すべき刑訴法411条の事由は認められない。
結論
本件上告は刑訴法405条の上告理由に当たらない。よって、刑訴法414条、386条1項3号により上告を棄却する。
実務上の射程
上告理由の記載において、判例違反を主張する際には事案の類似性を厳格に検討する必要があることを示唆している。実務上、形式的に判例を引用しても、事案の文脈が異なれば単なる訴訟法違反とみなされ、不適法とされるリスクがある。
事件番号: 昭和25(あ)1342 / 裁判年月日: 昭和26年7月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、弁護人による上告趣意が判例違反を主張するものであっても、その実質が単なる事実誤認等の主張にすぎない場合は、刑訴法405条の上告理由には当たらないと判断したものである。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が上告を申し立て、弁護人は上告趣意第三点において判例違反を主張した。しかし、その主張…
事件番号: 昭和26(あ)4194 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の上告について、事実誤認や量刑不当の主張は刑訴法405条の上告理由に当たらない。また、違憲の主張についても、先例の趣旨に照らし、憲法違反は認められない。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起したが、その主張内容は事実誤認および量刑不当であった。また、弁護人からも憲法違反を理由とする上告がなさ…