前に二回にわたり傷害罪で処罰された事実を資料として、その後一年余を経過して行われた暴行脅迫の行為を暴力行為等処罰に関する法律第一条第二項にいう常習として犯されたものと認定しても差支えない。
暴力行為等処罰に関する法律第一条第二項にいう常習の認定
暴力行為等処罰に関する法律1条
判旨
暴力行為等処罰に関する法律1条にいう「常習として」暴行等の罪を犯したか否かを認定するに際し、過去の傷害罪による前科を証拠とすることは許容される。傷害罪は暴行罪の結果犯としての性質を有するため、過去の傷害事犯は暴行等の常習性を基礎付ける事実となり得るからである。
問題の所在(論点)
暴力行為等処罰に関する法律1条(常習的暴行・脅迫等)の常習性を認定するにあたり、起訴された暴行・脅迫と同種の「暴行」を内包する「傷害罪」の前科を証拠として用いることができるか。
規範
暴力行為等処罰に関する法律1条の「常習」とは、暴行、脅迫等の特定の行為を反復して行う習癖をいい、その認定にあたっては、当該行為の態様のみならず、被告人の前科や犯罪傾向等も考慮される。特に刑法204条の傷害罪は、同208条の暴行罪の結果犯であるという関係にあるから、過去の傷害罪の処罰事績は、暴行等の常習性を認定するための有力な資料となり得る。
重要事実
被告人は暴行及び脅迫の罪に問われたが、これらが暴力行為等処罰に関する法律1条2項(現1条)に規定する「常習として」行われたものであるかが争点となった。被告人には、当該犯行の前年及び前々年に、それぞれ傷害罪により刑に処せられた事実が存在した。
事件番号: 昭和33(あ)1376 / 裁判年月日: 昭和34年2月26日 / 結論: 棄却
控訴審が、第一審判決判示第二および第三(一)(二)の事実認定ならびに法令の適用には誤がないとして是認し、ただ同判決第一事実は犯罪の証明がないとして破棄自判する場合において、あらためて右判決の判示第二および第三(一)(二)と同一事実を認定判示することは違法である。
あてはめ
本件被告人は、審判の対象である暴行・脅迫の所為が行われる前年及び前々年に、それぞれ傷害罪で刑に処せられている。傷害罪は暴行罪の結果犯としての性質を有する以上、傷害罪を犯した事実は、その前提として暴行等の行為を反復する習癖があることを強く推認させるものである。したがって、これらの傷害罪の前科を証拠として、本件の暴行・脅迫が常習として行われたものと認定することは相当である。
結論
傷害罪は暴行罪の結果犯であるから、過去の傷害罪による前科に基づき常習性を認定することは正当であり、暴力行為等処罰に関する法律1条の適用が認められる。
実務上の射程
常習特殊傷害等の認定において、過去の「傷害」前科を「暴行」の習癖の資料として用いる際の根拠となる判例である。答案上は、常習性の認定において前科が考慮できることを論じる際、「傷害罪は暴行罪の結果犯である」という性質に触れつつ、前科の類型と本件犯行の同質性を指摘する形で活用する。
事件番号: 昭和31(あ)1660 / 裁判年月日: 昭和33年7月29日 / 結論: 棄却
本件行為当時の情況上被告人に他の行為を期待することができない旨の主張があつた場合に、単に暴力行為等処罰に関する法律違反、暴行の有罪事実を認定することは、間接的にも期待可能性なるものの存否につき判断を示したものとは認められない。
事件番号: 昭和27(あ)2976 / 裁判年月日: 昭和31年12月20日 / 結論: 棄却
被告人四名が犯意を共通し共同して判示上京税務署員七名に対し各別にそれぞれ暴力行為等処罰に関する法律一条一項の違反行為を為し因て右署員中三名に対し各別にそれぞれ傷害を与えたような場合には右各被告人に対しそれぞれ四個の暴力行為等処罰に関する法律違反と三個の傷害罪が成立する。
事件番号: 昭和27(あ)2976 / 裁判年月日: 昭和31年12月20日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】複数の税務署員に対し共同して暴行・傷害を加えた場合、傷害に至らない暴行については暴力行為等処罰に関する法律1条1項が、傷害に至ったものについては刑法204条がそれぞれ独立して成立し、これらは併合罪の関係に立つ。 第1 事案の概要:被告人Pおよび共同被告人3名は、共謀の上、上京税務署員7名に対し、各…
事件番号: 昭和42(あ)1053 / 裁判年月日: 昭和42年10月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合の行為であっても、暴力の行使に出ることは正当な団結権の行使とは認められず、労働組合法1条2項の刑事免責の対象とならない。 第1 事案の概要:被告人らは、労働組合活動の一環として本件行為に及んだが、その態様は暴力の行使を伴うものであった。被告人らは、憲法28条が保障する団結権等に基づく正当な…