或る町において、町長が比較的大規模の工事を施行するにあたつては、町会議長のほか分掌事項上関連ある議員として厚生委員会の委員長、各委員などをもつて協議会を組織し、入札業者の指名、入札方法の選定、敷金額の決定等につき意見を求め、また厚生委員が町長の選任により右工事の監督にあたる等の慣例が存する場合において、右協議会で敷金額につき意見を述べること並びに右工事の監督に従事することは、町議会議員で且つ厚生委員としての職務行為そのものではないが、右職務に由来しこれと密接な関係を有する行為であるから、町議会議員であり且つ厚生委員である被告人等がかかる行為の対価として金員を収受すれば賄賂罪が成立する。
職務執行と密接な関係にある慣例上の行為に対する金員の収受と賄賂罪の成立。
刑法197条1項前段,刑法7条,地方自治法96条1項3号,地方自治法96条1項7号,地方自治法96条1項9号,地方自治法98条1項,地方自治法100条1項,地方自治法92条2項
判旨
町議会議員が、町長の諮問に応じ工事の入札方法等に意見を述べ、または工事監督に従事する行為は、職務権限そのものではなくとも、慣例上その職務と密接な関係を有する行為として「職務」に含まれる。
問題の所在(論点)
町議会議員である被告人らが、本来の議決機関としての権限を越え、執行機関である町長の事務(入札事務や工事監督)に協力する行為が、収賄罪の構成要件たる「職務」に当たるか。
規範
刑法上の収賄罪における「職務」には、公務員の法令上の権限に属する事務そのもののみならず、これと密接な関係を有する事務も含まれる。具体的には、その事務が法令上の職務権限に属さなくとも、慣例上、当該公務員の職務と密接に関連して行われる行為であれば、職務に関連するものと解するのが相当である。
重要事実
福岡県a町の町議会議員AおよびBは、同町が施行する比較的大規模な工事に際し、町長から協力を求められた。町長は慣例として、町議会議長や厚生委員会の委員(議員)らで組織する協議会に対し、入札業者の指名や入札方法、敷入札(予定価格の決定に関連する行為)等について意見を求めていた。Aは厚生委員として協議会で敷金額につき意見を述べ、Bは町長の選任により工事監督の任務に従事していたが、これらの行為に関連して賄賂を授受したとして収賄罪に問われた。
あてはめ
本件町においては、大規模工事の円満な遂行のため、町長が関連する町議会議員の協力を求める慣例が存在した。被告人Aによる協議会での意見陳述、および被告人Bによる工事監督業務は、いずれも町議会議員かつ厚生委員としての地位に由来し、右慣例に基づき行われたものである。かかる慣例は、議決機関と執行機関の分離の原則に照らしても直ちに違法とは断定できず、被告人らの行為は慣例上その職務と密接な関係を有する行為と認められる。したがって、当該行為に関して対価を得ることは収賄罪を構成する。
結論
被告人らの行為は町議会議員としての職務と密接な関係を有する行為であり、収賄罪が成立する。
実務上の射程
本判決は「職務密接関連事務」が収賄罪の職務に含まれることを示した。答案上は、法令上の権限がない場合でも、①公務員の地位に由来し、②慣例として定着している事務であれば、職務性を肯定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和32(あ)1490 / 裁判年月日: 昭和32年11月21日 / 結論: 棄却
大蔵事務官として南九州財務局長官官房総務課文書係である者は、同財務局(理財部金融課)の行う金融機関の業務および財産の検査についても、その日時の事前内報をしてはならない職務を有する。