日本電信電話公社職員たる信越電気通信局支出役名義の文書は、公文書である。
日本電信電話公社の職員の作成すべき文書は公文書か
刑法155条,刑法7条,日本電信電話公社法18条,日本電信電話公社法35条
判旨
日本電信電話公社の職員は、法令により公務に従事する者とみなされているため、その名義で作成された文書は刑法上の公文書に該当する。
問題の所在(論点)
日本電信電話公社の職員(支出役)名義で作成された文書が、刑法155条1項に規定する「公務所又は公務員の作成すべき文書」(公文書)に該当するか。
規範
刑法155条にいう「公務所又は公務員」の意義については、同法7条の定義による。また、特別法により「罰則の適用については、法令により公務に従事する者とみなす」と規定されている公社等の職員がその職務に関して作成した文書は、刑法上の公文書に該当する。
重要事実
被告人は、日本電信電話公社の地方機関である信越電気通信局の支出役名義の文書を偽造した。当時の日本電信電話公社法は、その職員について、罰則の適用に関しては法令により公務に従事する者とみなすと規定していた。第一審判決はこれを公文書偽造罪として認定し、被告人が上告した事案である。
事件番号: 昭和31(あ)17 / 裁判年月日: 昭和31年7月5日 / 結論: 棄却
A法務社岸和田支局またはB地方法務新聞宇治山田支局各名義の各船舶登記証書を作成した場合においても、A法務社岸和田支局なる印の「社」およびB地方法務新聞宇治山田支局之印なる印の「新聞」という各文字の処を殊更に不鮮明に押捺し、各その形式外観によつて、一般人をしてA法務局岸和田支局またはB地方法務局宇治山田支局が権限により作…
あてはめ
信越電気通信局は日本電信電話公社の地方機関であり、その支出役は公社の会計職員である同局会計課長をもって充てられる。日本電信電話公社法35条および18条によれば、公社職員は罰則の適用については「法令により公務に従事する者」とみなされている。したがって、当該支出役は刑法7条にいう公務員にあたり、その名義で作成された本件文書は、公務員がその職務に関し作成すべき文書、すなわち公文書といえる。
結論
日本電信電話公社の支出役名義の文書は公文書に該当する。したがって、これを偽造する行為には公文書偽造罪が成立する。
実務上の射程
現在は民営化されているが、国立大学法人の職員や郵便局員(旧郵政公社)、あるいは各種独立行政法人の職員など、特別法によって「みなし公務員」規定が置かれている場合の公文書性の判断にそのまま射程が及ぶ。答案上は、根拠となる特別法の規定を指摘した上で、刑法7条および155条の解釈として本判例の論理を用いる。
事件番号: 昭和31(あ)153 / 裁判年月日: 昭和31年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】虚偽公文書作成罪(刑法156条)の客体である「公務員がその職務に関し作成すべき文書」とは、公務員が職務権限に基づき作成する文書全般を指し、その内容や形式は限定されない。 第1 事案の概要:被告人が関与した特定の文書(本件文書)について、これが刑法156条に規定される「公務員の職務に関する文書」に該…
事件番号: 昭和28(あ)3367 / 裁判年月日: 昭和30年6月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実在しない架空の公務員名義を用いた文書であっても、一般人が公務員により作成された真正な文書と誤認するに足りる外観を備えている場合には、公文書偽造罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、実際には存在しない「A検査員B」という架空の公務員名義を用いて文書を作成し、これを行使した。第一審判決および原…
事件番号: 昭和32(あ)1425 / 裁判年月日: 昭和35年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】虚偽公文書作成罪(刑法156条)等における「公文書」とは、公務員がその職務上作成すべき文書を指し、その形式や名称の如何を問わず、実質的に公務員の職務権限に基づき作成されたものであればこれに該当する。 第1 事案の概要:本件は、被告人らが共謀し、公文書を偽造(虚偽記載)し、これを行使したとして虚偽公…
事件番号: 昭和33(あ)1735 / 裁判年月日: 昭和34年8月28日 / 結論: 棄却
A鉄道管理局B電力区助役として区長を補佐する傍ら同管理局から出納員もしくは事務助役出納員として指命され、部内職員の給料、族費等の交付、保管等対内的な出納事務には従事するが、同電力区助役もしくは右出納員名義をもつて対外部関係に関する公文書を作成すべき一般的職務権限を有しない被告人が、行使の目的をもつて内容虚偽の電柱代金代…