訴訟記録が紛失し上告理由の有無について証明の方法がなく、その他に原審の訴訟手続が適法になされたことを確証するに足る証拠もないときは上告理由があるものといわねばならない。
訴訟記録の紛失と上告理由の判断
旧刑訴法410条,旧刑訴法64条,刑訴法411条,刑訴法410条
判旨
第一審及び控訴審の公判調書等の訴訟記録がすべて紛失し、訴訟手続の適法性を証明する証拠がない場合には、絶対的上告理由があるものとみなして原判決を破棄すべきである。
問題の所在(論点)
公判調書等の訴訟記録がすべて紛失し、訴訟手続の適法性を直接確認できない場合に、絶対的上告理由の有無をどのように判断すべきか。
規範
訴訟記録(公判調書等)が完全に紛失し、他に訴訟手続が適法になされたことを確証するに足りる証拠がない場合には、法律に従い判決裁判所を構成したか否か等の訴訟手続の適法性が担保されないため、絶対的上告理由(旧刑訴法410条各号)があるものと判断される。
重要事実
被告人の傷害致死事件について適法に公訴が提起された事実は、検事作成の証明書や刑事事件簿写等の間接的な記録から認められた。しかし、第一審及び原審(控訴審)における公判調書その他の訴訟記録がすべて紛失しており、他に原審の訴訟手続が適法になされたことを直接的に証明する手段が存在しなかった。
あてはめ
本件では、公訴提起の事実は検察側の各種帳簿写等により推認可能であった。しかし、裁判所の構成や公判手続の適法性を証明すべき公判調書が全紛失しており、これに代わって適法性を確証する証拠も存在しない。この状況下では、裁判所の構成や訴訟手続が法律に従って行われたことを確認する術がない以上、旧刑訴法410条1号ないし18号等に掲げられた絶対的上告理由があるものと言わざるを得ない。
結論
原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
訴訟記録の紛失という極めて特殊な事案であるが、公判調書による訴訟手続の証明(現行刑訴法52条参照)が不可能となった際の救済の在り方を示す。答案上は、手続の適法性が事後的に検証不能となった場合の法的帰結を論じる際の参考となる。
事件番号: 昭和26(れ)1588 / 裁判年月日: 昭和26年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、刑訴法405条の上告理由に該当しない事案について、職権調査規定である同法411条を適用すべき顕著な事由も認められないとして上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が刑訴法405条各号所定の上告理由を主張して上告したが、最高裁判所は記録を精査した結果、いずれの主張も…