職業安定法第六三条第二号の罪と同法第六四条第一号の罪につき併合罪加重をなす場合には刑法施行法第三条第三項を適用すべきでない。
職業安定法第六三条第二号の罪と同法第六四条第一号の罪につき併合罪加重をなす場合と刑法施行法第三条第三項。
職業安定法63条2号,職業安定法64条1号,刑法施行法3条3項,刑法45条,刑法47条
判旨
複数の罪が併合罪の関係にある場合、各罪について法定刑から懲役刑を選択したときは、併合罪加重がなされた結果として法定刑は一個のものとなるため、刑法施行法3条3項の適用を検討する余地はない。
問題の所在(論点)
数罪が併合罪の関係にあり、それぞれについて懲役刑を選択して併合罪加重を行う場合において、刑法施行法3条3項を適用して個別に刑の重軽を比較検討する必要があるか。
規範
職業安定法違反等の複数の罪が併合罪(刑法45条前段)の関係にある場合、裁判所が各罪の法定刑の中から懲役刑を選択したときは、併合罪加重(同法47条)の結果、処断刑の範囲を画定する基礎となる法定刑は一つに統合されたものとみなされる。このプロセスにおいて、刑法施行法3条3項(新旧法の比較等)の適用要件を判断する対象は、選択・統合された後の刑となる。
重要事実
被告人は、職業安定法63条2号違反(判示第一事実)および同法64条1号違反(判示第二事実)に問われた。原判決はこれらを併合罪として扱い、両罪の法定刑の中からそれぞれ懲役刑を選択した上で、併合罪加重を行って刑を言い渡した。これに対し弁護人は、刑法施行法3条3項を適用すべきであると主張して上告した。
あてはめ
本件において、判示第一事実は職業安定法63条2号に、第二事実は同法64条1号に該当し、両者は併合罪の関係にある。原判決は併合罪加重を行うに際し、各罪の法定刑の中から懲役刑を選択している。この懲役刑の選択により、適用されるべき法定刑は各一個(統合された範囲)となっている。したがって、個別の罪について刑法施行法3条3項を適用し、旧法との比較等を行う前提を欠いているといえる。
結論
併合罪加重に際して懲役刑が選択された以上、法定刑は一個のものとなっており、刑法施行法3条3項を適用すべき余地はない。上告棄却。
実務上の射程
併合罪における処断刑形成のプロセスを確認する趣旨。複数の構成要件に該当する場合でも、刑の選択および加重の結果、最終的な「法定刑(処断刑の基礎)」は一本化されるため、新旧法の比較や修正条項の適用は、その一本化された枠組みを基準に判断すべきであることを示唆している。
事件番号: 昭和33(あ)1686 / 裁判年月日: 昭和36年12月6日 / 結論: 棄却
弁護人の上告趣意は、職業安定法六三条二号が罪の内容を定めるのに「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で」といつているのは、罪となるべき行為の定め方があいまいであつて、罪刑法定主義を規定した憲法三一条に違反すると主張する。しかし、第一審判決の確定した事実によれば、本件は、すべて売春を業とする接客婦の雇用をあつ旋…
事件番号: 昭和30(あ)3483 / 裁判年月日: 昭和33年5月6日 / 結論: その他
業として、同一の婦女を公衆衛生又は公衆道徳上有害な売淫婦の業に就かせる目的で、婦女に売淫させることを業としている者に接客婦として就職を斡旋し、雇主から紹介手数料として金員を受領し利益を得たときは、一個の行為にして労働基準法一一八条(六条違反)の罪と職業安定法六三条二号の罪との二個の罪名に触れる場合に当る