旧関税法(昭和二三年法律第一〇七号による改正のもの)第八三条にいわゆる「原価」は、輸入または逋脱に関する犯罪に係る物の場合と、輸出に関する犯罪に係る物の場合とによつて異り、前者は、輸入の際における抽象的な到着価格(同価格の算定について判決理由参照)を謂い、後者は、当該貨物と同種同質の物の国内における卸売価格と輸出港における船積までの一切の費用を合算した抽象的価格をいう。
旧関税法(昭和二三年法律第一〇七号による改正のもの)第八三条にいわゆる「原価」の意味
旧関税法(昭和23年法律107号による改正のもの)83条,旧関税法(昭和23年法律107号による改正のもの)74条,旧関税法(昭和23年法律107号による改正のもの)75条,旧関税法(昭和23年法律107号による改正のもの)76条
判旨
関税法旧83条における貨物の「原価」とは、輸出の場合はFOB価格(国内卸売価格と輸出港船積までの諸費用の合算額)をいい、輸入の場合はCIF価格(仕入地原価に輸入港到着までの諸費用を加えた価格)をいう。
問題の所在(論点)
関税法(昭和23年法律107号による改正前の旧法)旧83条に規定される、没収不能の際の追徴額等の算定基準となる「原価」の意義および算定方法が問題となった。
規範
関税法旧83条にいう「原価」は、個別の取引価格や通俗的な意味での原価とは異なる抽象的価格を指す。具体的には、①輸出貨物の場合は輸出港におけるFOB(Free On Board)価格、すなわち国内卸売価格に船積までの諸費用(運送費、保管料等)を加算したものを指す。②輸入貨物の場合は輸入港到着時におけるCIF(Cost, Insurance and Freight)価格、すなわち仕入地原価に輸入港到着までの荷造費、保険料、運送費等を加算した抽象的到着価格を指す。ただし、CIF価格の算出が困難な場合は、国内市場価格から関税等の諸費用を控除する等の適正な方法による。
重要事実
事件番号: 昭和32(あ)935 / 裁判年月日: 昭和35年2月27日 / 結論: 棄却
関税法(昭和二九年法律第六一号)第一一八条第二項にいう「その没収することができないもの又は没収しないものの犯罪が行われた時の価格」とは、輸入貨物についてはその犯罪が行われた当時における国内卸売価格(関税および国内消費税込)をいう。
被告人が関税法違反(密輸出入等)に問われた事案において、第一審判決は、大蔵技官等の鑑定に基づき輸出貨物および輸入貨物の「原価」を算定し、追徴等の判断の基礎とした。被告人側は、この原価の意義について判例違反や法令違反があると主張して上告した。原判決(二審)は、輸出港における一般的価格をもって原価とする第一審の判断を是認していた。
あてはめ
本件における鑑定書によれば、輸出貨物については犯行当時におけるFOB価格が、輸入貨物についてはCIF価格がそれぞれ鑑定されている。原判決が「輸出港(輸入港)における一般価格」とした表現は、当裁判所の示す規範(FOB/CIF価格)と必ずしも一致せず不分明な点があるが、その実質において鑑定結果を採用し、結果として適正な抽象的価格を原価として認定している以上、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
結論
輸出原価はFOB価格、輸入原価はCIF価格を指すと解するのが相当である。本件の認定は結果においてこれらと整合するため、上告を棄却する。
実務上の射程
行政刑法における「価格」や「原価」の解釈において、単なる主観的な購入価格ではなく、市場実態を反映した客観的・抽象的な価格(貿易用語としてのFOB/CIF)を用いるべきであることを示した。経済犯罪における追徴金の算定基準を確定させる際に参照すべき判例である。
事件番号: 昭和45(あ)761 / 裁判年月日: 昭和46年3月25日 / 結論: 棄却
一 関税法(昭和二九年法律第六一号)一一八条二項により犯人から追徴すべき金額算定の基準たる価格、すなわち同項にいう「その没収することができないもの又は没収しないものの犯罪が行われた時の価格」とは、輸入貨物については、その犯罪が行なわれた当時における国内卸売価格(関税および内国消費税込)をいう。 二 昭和四一年法律第三六…
事件番号: 昭和29(あ)1237 / 裁判年月日: 昭和33年2月14日 / 結論: 棄却
所論A丸の没収につきその所有者が何人であるかの事実は、刑訴三三五条にいう罪となるべき事実に属しないから、これを認めた証拠を判決に挙示する必要はない。
事件番号: 昭和42(あ)346 / 裁判年月日: 昭和42年10月12日 / 結論: 棄却
関税法第一一一条第一項に違反して輸出された犯罪貨物に関し、同法第一一八条第二項に定める「その没収することができないもの又は没収しないものの犯罪が行われた時の価格」とは、その犯罪が行なわれた当時における犯罪貨物の国内卸売価格を指し、右価格中には内国消費税および通常の卸売取引における適正利潤が含まれるものと解するのを相当と…