一 輸出品取締法第七条の九(昭和二八年法律第九号による改正前のもの)に定めるいわゆる立入検査の職務権限中には、輸出茶の標準、包装条件等の検査事務を含む。 二 収賄した金員を金融機関に預金した場合、その収賄金員そのものはもはや没収することができないものとして追徴すべきものである。
一 輸出品取締法第七条の九(昭和二八年法律第九号による改正前のもの)と輸出茶の検査。 二 収賄金員の預金と追徴。
輸出品取締法(昭和28年法律9号による改正前のもの)7条の9,刑法197条ノ4
判旨
収受した賄賂が金銭である場合、特段の事情により特定性が認められない限り、一部を費消し残部を預金したときは、当該金員そのものを没収することはできず、その価額を追徴すべきである。
問題の所在(論点)
受賄者が収受した現金の一部を費消し、残部を預金した場合に、刑法197条の5(収賄罪における没収・追徴)の適用において、当該金員そのものを没収することができるか、あるいは「没収することができないとき」として追徴すべきかが問題となる。
規範
金銭は高度の代替性を有する性質上、それが特定の物として他の金銭と区別され特定されていることが明らかでない限り、その物自体を没収することはできない。したがって、受賄者が収受した金銭を費消、混蔵、または預金等に供したことにより、収受した物そのものを没収することが不能となった場合には、刑法197条の5後段に基づき、その価額を追徴すべきである。
重要事実
被告人は、輸出品取締法に基づく立入検査等の職務に関し、賄賂として金員を収受した。被告人は収受した金員のうち、一部を私的な目的に費消し、残りの部分を金融機関の口座に預金した。原審は、当該金員そのものはもはや没収することができないものとして、その全額について追徴を命じた。これに対し弁護人は、没収不能とはいえない旨を主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人が収受した現金は、一部が費消され、残部が金融機関に預け入れられている。金銭は、封筒に入れられたまま保存されている等の特段の事情がない限り、占有の移転や混蔵によって特定性が失われる。預金された金員は、銀行に対する債権に転化しており、物理的な現金としての特定性は認められない。したがって、収受した金員そのものを没収することは事実上不可能であり、金銭の性質上特定していることが明らかでない場合に該当する。それゆえ、没収に代えてその価額を追徴した原審の判断は正当である。
結論
被告人が収受した金員を一部費消し、他を預金した場合には、賄賂そのものを没収することはできないため、その価額を追徴すべきである。
実務上の射程
収賄罪における没収・追徴の対象に関する基本判例である。金銭の代替性に着目し、現金のまま保管されていない限りは「特定性」を否定して追徴を選択する実務上の運用を支える。答案上は、賄賂が金銭である場合に、その所在(預金や他物への買い替え等)を指摘した上で、特定性の欠如を理由に追徴(刑法197条の5後段)を導く際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和26(れ)2392 / 裁判年月日: 昭和27年3月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】収受した賄賂そのものが返還されず、生活費等に費消された場合には、後にその金額に相当する額を返還したとしても、依然として追徴を免れない。 第1 事案の概要:被告人は賄賂を収受したが、その現物を返還することなく生活費等に費消した。その後、被告人は費消した賄賂の金額に相当する額を贈賄側に返還した。これに…