一 物品税法第一八条第一項(無申告製造罪)は、政府に申告しないで同号所定の物品を製造した事実そのものを処罰しようとするもので、無申告製造にかかる物品を移出した事実の存する必要はない。 二 旧物品税法第一七条ノ三(昭和二四年法律第二八六号による改正前のもの)を適用する場合においても、必ずしも無申告で製造した物品の移出した事実を判文に明示する必要はない。
一 物品税法第一八条第一項(無申告製造罪)の法意 二 旧物品税法第一七条ノ三第二項を適用する場合と無申告製造にかかる物品を移出した事実を判示することの要否
物品税法(昭和24年法律第286号による改正後)18条,物品税法(昭和24年法律第286号による改正前)17条ノ3,刑訴法335条1項
判旨
物品税法の無申告製造犯において、情状により一定額を超える罰金を科すための加重規定(旧法17条ノ3第2項等)を適用する場合、製造場からの「移出」の事実は構成要件ではないため、判決書に明示する必要はなく、記録上確認できれば足りる。
問題の所在(論点)
無申告製造犯に対し、製造物品の税額を基準とする罰金の加重規定を適用して上限額を超える罰金を科す場合、「物品の移出」や「具体的な税額算定の基礎となる数量」を、判決文において構成要件的事実として明示する必要があるか。
規範
特定の脱税犯や無申告製造犯において、情状により高額の罰金を科すための加重規定(罰金多額の特例)を適用する場合、その算定根拠となる事実(物品の移出、数量、税額相当額等)は、犯罪そのものの構成要件ではない。したがって、これらの事実は必ずしも判決文の罪となるべき事実(判文)に明示することを要せず、訴訟記録上これらの事実が認められ、算定された罰金額が法定の範囲内であれば、適法である。
重要事実
被告人は、政府に申告することなくズルチン(物品税課税対象)を製造した。第一審判決は、無申告製造の事実に旧物品税法17条ノ3第2項を適用し、同条1項の定める上限10万円を超える罰金100万円を科した。弁護人は、高額の罰金を科すには「製造場より移出したこと」及び「その数量」を確定し判文に示さなければならないと主張して上告した。なお、記録上の供述調書等によれば、製造された物品はその都度出荷・移出されていた事態が認められた。
あてはめ
旧物品税法17条ノ3第1項の無申告製造犯は、無申告での製造という事実をもって処罰するものであり、移出は構成要件ではない。同条2項による罰金の加重は、情状により高額の罰金を科すための量刑上の規定である。本件において、一審判決が判文に移出の事実を明示しなかったとしても、被告人の質問顛末書や供述調書等の記録によれば、製造した物品をその都度移出したことが認められる。この記録上の事実に照らせば、加重規定の適用前提となる要件は満たされており、算定された罰金100万円も法定の範囲内であるといえる。したがって、判文への明示を欠くことは違法ではない。
結論
移出の事実は構成要件ではないため、判決文に明示しなくとも、記録上認められる限り、加重規定を適用して高額の罰金を科すことは正当である。
実務上の射程
罰金の多額を税額の倍数等で規定する刑罰規定(脱税犯等)における、算定基礎事実の判示の要否に関する射程を有する。構成要件と量刑事情の区別を示す事案として、実務上は量刑の適法性を支える記録の重要性を強調する際に参照し得る。
事件番号: 昭和30(あ)3777 / 裁判年月日: 昭和33年7月15日 / 結論: 棄却
物品税法にいう移出とは、課税物品を製造場から他の場所に移動させる事実行為をいうのであり、売買、贈与等の法律行為を伴う場合に限られないものと解するを相当とする。