貸金業等の取締に関する法律施行の際、現に貸金業を行つている者が、同法施行後従前からの貸金につきその条件を変更しまたはその支払期日を延期する等その貸金債権を準消費貸借に改めまたはその支払を延期する行為も、同条にいう「金銭の貸付」と解するのが相当である。
貸金業等の取締に関する法律第二条にいう「金銭の貸付」の意義
貸金業等の取締に関する法律2条,出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律3条,出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律5条,出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律6条,出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律7条,出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律9条
判旨
貸金業等の取締に関する法律にいう「貸金業」とは、反復継続の意思をもって金銭の貸付け等を行うことをいい、営利の目的は不要である。また、法施工前からの貸金債権について、支払期日の延期や準消費貸借への書き換えを行うことも「金銭の貸付け」に含まれる。
問題の所在(論点)
1. 既存債権の条件変更や準消費貸借への切り替えが「金銭の貸付け」に該当するか。2. 「貸金業」の成立に営利の目的(報酬・利益を得る意思)が必要か。3. 1回の行為であっても「業」として認められるか。
規範
1. 貸金業法(旧法2条1項)にいう「業として行う」とは、反復継続の意思をもって金銭の貸付け又は媒介を行うことを指し、必ずしも報酬や利益を得る意思、またはこれを得た事実を必要としない。2. 反復継続の意思がある以上、具体的行為が1回であっても「業」に該当し得る。3. 「金銭の貸付け」には、既存の貸金につき条件変更、支払期日の延期、または債務を準消費貸借に改める行為も含まれる。
重要事実
被告人は、貸金業等の取締に関する法律(当時)の施行前から無利息で金銭を貸与していた。法施行後、被告人は当該貸金について、月1割の利息を定める条件変更を行ったり、元金に利息を加算した額を新元金とする準消費貸借に改めたりした。また、支払確保のために約束手形を振出させて支払期日を延期した。これらの行為が、同法にいう無登録での「貸金業」の営営に該当するかが争われた。
事件番号: 昭和27(あ)2827 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】貸金業等の取締に関する法律における「貸金業」とは、反復継続の意思をもって金銭の貸付け又はその媒介を業として行うことを指し、不特定多数人を相手にする場合に限定されない。 第1 事案の概要:被告人は、貸金業等の取締に関する法律上の登録を受けずに、反復継続して金銭の貸付け等を行ったとして起訴された。弁護…
あてはめ
1. 本件では、法施行前からの無利息貸付けを利息付に変更し、あるいは利息を元金に組み入れて準消費貸借とし、支払期日を延期している。これは実質的に新たな貸付けと同様の機能を有するため、「金銭の貸付け」に該当する。2. 「業」の判断において、営利目的の有無は要件ではない。反復継続の意思の有無が基準となる。3. 被告人の行為は、証拠によれば反復継続の意思をもって行われたものと認定でき、客観的に特定の回数に限定されるものであっても、その意思に基づく以上は「業」として行ったものと解するのが相当である。
結論
被告人の所為は貸金業法にいう「金銭の貸付け」を「業」として行ったものに該当する。したがって、無登録営業として有罪とした原判決は正当である。
実務上の射程
行政法や刑法における「業として」の解釈の典型例。営利目的を不要とする点は公衆衛生や金融秩序維持を目的とする取締法規に共通する法理である。また「貸付け」の概念を準消費貸借等に広げる判断は、法の潜脱を防ぐ実務的意義が高い。
事件番号: 昭和26(あ)853 / 裁判年月日: 昭和29年11月24日 / 結論: 棄却
一 貸金業等の取締に関する法律二条第一項にいう「貸金業」とは反覆、継続の意思をもつて金銭の貸付又は金銭の貸借の媒介をする行為をすれば足り必ずしも報酬若しくは利益を得る意思またはこれを得た事実を必要とするものではない。 二 貸金業等の取締に関する法律第一八条第一号の規定は職業選択の自由について規定した憲法第二二条に違反し…
事件番号: 昭和27(あ)2189 / 裁判年月日: 昭和28年11月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】貸金業等の取締に関する法律にいう「業として行う」とは、反復継続して金銭の貸付け等を行うことを指し、必ずしも営利の目的(利益を図ること)を必要としない。 第1 事案の概要:被告人が、貸金業等の取締に関する法律(現:貸金業法)の登録を受けずに金銭の貸付け等を行った。被告人側は、同法5条(現:貸金業法4…
事件番号: 昭和28(あ)601 / 裁判年月日: 昭和30年4月22日 / 結論: 棄却
貸金業等の取締に関する法律第二条にいう「貸金業」の意義は当裁判所の判例(昭和二六年(あ)第八五三号同二九年一一月二四日大法廷判決)のとおりであつて客観的に観察して貸金業としての形態を備えることは右「貸金業」の要件には属しない。
事件番号: 昭和28(あ)2460 / 裁判年月日: 昭和29年4月8日 / 結論: 棄却
貸金業等の取締に関する法律にいわゆる「貸金業」とは、反覆継続して行う意思の下に金銭の貸付又は金銭貸借の媒介行為を行うことをいい、利を図ることはその要件でない。