一 商品のラベルに押捺された物品税表示証の表示(検印)は、刑法第一六六条にいう公務所の記号にあたる。 二 右表示(検印)の偽造も模造もともに真正の検印を模擬するものであるが、その模擬の程度が通常人をして真正のものであるという印象を与える程度のものであるときは偽造であり、その程度に至らないときは模造であると解すべきである。 三 清涼飲料の製造販売を目的とする会社の代表者が、後日政府に申告すべき製造場から移出したびん詰の清涼飲料の数量を真実より少く申告するため、偽造の検印を押捺したラベルを各びんに貼付して製造場から移出したときは、物品税法第一八条第一項第二号にいわゆる「不正ノ行為ヲ以テ物品税ノ逋税ヲ図リタル者」にあたる。
一 商品のラベルに押捺された物品税表示証の表示(検印)の性質 二 右表示(検印)の偽造と模造との区別 三 物品税の逋脱を図つた罪が成立する一事例
刑法166条,物品税法16条ノ2,物品税法16条ノ3,物品税法8条,物品税法10条,物品税法施行規則37条ノ4,物品税法施行規則37条ノ6,物品税法施行規則37条ノ7,昭和26年5月25日大蔵省告示678号,印紙等模造取締法1条
判旨
物品税表示証の表示(検印)は、公務所が作成すべき文書に該当すると解される。物品税証紙が刑法155条3項の公文書に該当するとした判例とは事案を異にするが、本件の検印についても同様に公文書偽造罪の客体となり得る。
問題の所在(論点)
物品税表示証の表示(検印)が、刑法155条3項に規定される「公務所又は公務員の作成すべき文書」に該当するか。
規範
刑法155条3項にいう公務所又は公務員の作成すべき「文書」とは、公務所又は公務員がその職務上作成する文字またはこれに代わるべき符号を記載した物件を指す。物品税法に基づく表示(検印)についても、その内容が納税の証明等という公的な意味を有するものであれば、同条の客体たる公文書に該当する。
重要事実
事件番号: 昭和34(あ)1811 / 裁判年月日: 昭和35年3月10日 / 結論: 棄却
物品税表示証紙は刑法第一五五条第三項の公文書にあたるものと解するのが相当である。
被告人は、物品税の課税対象である玉ラムネおよびサイダーについて、本来公務所が押印すべき物品税表示証の表示(いわゆる検印)を不正に作成した。弁護人は、物品税証紙を公文書とした判例はあるが、本件のような表示(検印)は公文書には当たらないと主張して上告した。
あてはめ
本件の玉ラムネおよびサイダーは、物品税法および同法施行規則に基づき課税物件である清涼飲料に該当する。この課税物件に付される物品税表示証の検印は、納税の事実を証明するために公務所によってなされるべきものである。したがって、物品税証紙そのものとは形式が異なるものの、公務所が職務上作成すべき符号としての性質を有しており、公文書偽造罪の客体である文書と評価できる。
結論
物品税表示証の検印は刑法155条3項の公文書に該当するため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
記号や符号であっても、それが公務所の職務上の証明等を含むものであれば公文書偽造罪の客体になり得ることを示す。司法試験においては、公文書の定義(文字・符号の化体)を論じる際の具体例として活用できるが、現代の物品税法廃止後の実務では、他の納税証明や公印等への類推適用が想定される。
事件番号: 昭和28(あ)1670 / 裁判年月日: 昭和29年8月20日 / 結論: 棄却
物品税証紙は刑法第一五五条第三項の文書に該当する。
事件番号: 昭和29(あ)3426 / 裁判年月日: 昭和32年11月29日 / 結論: 棄却
所論指示書と題する文書の内容文言が、たとえ被告人以外の者の手で既に記載されてあつた場合であつても、それが無権限者によつてなされたものであり、且つa地方事務所長たる記名職印が施されてはじめて効用ある文書として完成するものであると認められる以上、行使の目的をもつて右文言の書面に無権限に右事務所長名の記名ゴム印及びその職印を…
事件番号: 昭和59(あ)555 / 裁判年月日: 昭和61年6月27日 / 結論: 棄却
行使の目的をもつて、ほしいままに、営林署長の記名押印がある売買契約書の売買代金欄等の記載に改ざんを施すなどしたうえ、これを複写機械で複写する方法により、あたかも真正な右売買契約書を原形どおり正確に複写したかのような形式、外観を備えるコピーを作成した所為は、その改ざんが原本自体にされたのであれば未だ文書の変造の範ちゆうに…
事件番号: 昭和25(れ)1375 / 裁判年月日: 昭和26年4月27日 / 結論: 破棄自判
一 経済関係罰則の整備に関する法律第一条の規定と対比して見ると、同条は別表甲号に掲げる経済団体の「役員其ノ他ノ職員ハ罰則ノ適用ニ付テハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ従事スル職員ト看做ス」旨を規定しているが同第二条には、かかる規定は存在しない。すなわち、以上各規定の趣旨からみれば、右別表甲号、乙号掲記の経済団体の職員はいずれも本来…