被告人以外の者の検察官に対する供述調書について、弁護人から特信性がないから証拠調に反対の旨の異議申立があり、右異議は理由なしとして却下された旨公判調書に記載されている場合は、右異議についての裁判に際し、その任意性の有無についても調査せられたものと解するを相当とする。
被告人以外の者の検察官に対する供述調書の任意性に関する調査があつたと認められる事例
刑訴法325条
判旨
刑事訴訟法325条に基づく供述の任意性の調査は、裁判所が適当と認める方法で行うことができ、その調査事実は必ずしも調書に記載することを要しない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法325条に基づく供述の任意性の調査について、裁判所はどのような方法で行うべきか。また、その調査の事実を公判調書等に明示的に記載する必要があるか。
規範
刑事訴訟法325条に基づく供述の任意性の有無に関する調査は、裁判所が適当と認める方法によって行うことができる。また、供述調書の方式のみならず、その内容自体も調査の資料となり得る。さらに、当該調査の事実は必ずしも公判調書等に記載することを要しない。
重要事実
被告人が背任等の罪に問われた事件において、証人Bの検察官に対する供述調書の証拠能力が争点となった。弁護人は特信性がないとして証拠調べに異議を申し立てたが、裁判所はこれを理由なしとして却下した。弁護側は、公判調書に任意性の調査に関する具体的な記載がないことを理由に、裁判所が調査を尽くしておらず訴訟法違反であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、任意性の調査方法は裁判所の裁量に委ねられており、調書の内容自体も資料となり得ると判示した。本件では、公判調書において弁護人による証拠調べへの異議申し立てを却下した旨の記載がある。この記載から、裁判所が異議に対する裁判を行う過程において、付随的に任意性の有無についても調査を行ったものと解するのが相当である。したがって、調書に「任意性の調査をした」という独立した記載がなくとも、調査が欠如していたとはいえない。
結論
任意性の調査は適法に行われたものと認められ、調書への記載欠如を理由とする訴訟法違反の主張は採用できない。
実務上の射程
伝聞証言の証拠能力(任意性)が争われる場面において、裁判所の職権調査の態様が極めて広範かつ自由であることを示す。実務上、証拠決定のプロセスに調査が含まれていれば、独立した調査手続や調書記載がなくても適法とされる蓋然性が高い。
事件番号: 昭和28(あ)1492 / 裁判年月日: 昭和28年7月16日 / 結論: 棄却
所論Aの第四回供述調書が記録に編綴されておらず虚無の証拠を断罪の資料に供した違法があつたとしても、原判決は右証拠を除いても被告人に対する判示犯罪事実は充分認定できるといつているのであつて、当裁判所においても、原判決の右判断は首肯できる。