一 法廷における秩序維持のため必要がある場合においては、退去命令に基づきその執行として、裁判官の指揮により右法廷のある建物の外まで退去させることができるものと解すべきである。 二 裁判所法第七一条の法廷秩序維持権は、法廷における秩序維持に必要なかぎり、法廷の内外を問わず裁判官が妨害行為を直接目撃または聞知し得る場所まで及ぶものと解すべきである。 三 裁判所法第七一条の法廷秩序維持権を行使し得る時間的限界(始期と終期)は、法廷の開廷中およびこれに接着する前後の時間を含むものと解すべきである。 四 万一発生すべき本件の如き自体に対処するため、事前に所論のような指示を警備員に与えたとしても、これを違法と目すべき理由はない。
一 退廷命令に基づき法定の在る建物の外まで退去させることができるか 二 法廷秩序維持権の及ぶ場所的範囲 三 法廷秩序維持権の及ぶ時間的限界 四 警備員に対して退廷命令を出したら傍聴人の法廷のある建物の外に出すようにと事前に指示したことの可否
裁判所法71条,法廷の秩序維持に関する法律2条,法廷等の秩序維持に関する法律2条
判旨
裁判所法71条に基づく法廷秩序維持権は、場所的には法廷の内外を問わず、時間的には開廷中およびこれに接着する前後の時間に及び、退廷命令の執行として建物の外まで退去させることも認められる。
問題の所在(論点)
裁判所法71条に基づく法廷秩序維持権および退廷命令の効力が及ぶ「場所的範囲」と「時間的範囲」が問題となる。具体的には、判決言渡し後の行使の可否、および法廷外(建物外)への連行が適法な職務執行の範囲内といえるかが問われた。
規範
裁判所法71条の法廷秩序維持権は、法廷の秩序を維持するに必要な限り、場所的には法廷の内外を問わず裁判官が妨害行為を直接目撃または聞知し得る場所まで及び、時間的には開廷中およびこれに接着する前後の時間にまで及ぶ。また、退廷命令に基づき法廷外の何処まで退廷を執行し得るかは、秩序維持を必要とする具体的状況によって決まり、建物外であっても喧騒を聞知し得ない場所まで退去させることを妨げない。
重要事実
多数の傍聴人が、裁判官による退廷命令の発令前において既に静粛な退廷を拒み、喧騒を極めて一部の者が警備員に反抗的態度を示していた事案である。判決言渡し後、警察官らが裁判官の指揮に基づき、退廷命令の執行として被告人を法廷の存する建物の外まで退去させた行為が、公務執行妨害罪における「正当な職務の執行」にあたるかが争われた。
あてはめ
本件では、傍聴人が多数で極めて喧騒な状態にあり、法廷付近の状況に照らせば、法廷内からの排除に留まらず、喧騒を聞知し得ない建物外まで退去させる必要性が認められる。また、判決言渡し後であっても「開廷中に接着する前後」に含まれるため、秩序維持権の行使は可能である。したがって、裁判官の指揮に基づき警察官が行った建物外への排除行為は、法廷秩序維持権の適正な行使の範囲内といえる。
結論
被告人を建物外に退去させた警察官の行為は、裁判所法に基づく正当な職務執行である。したがって、これに抵抗する行為は公務執行妨害罪を構成し得る。
実務上の射程
法廷警察権の限界を画した重要判例である。答案上は、職務執行の適法性が争点となる公務執行妨害罪等の事案において、裁判所法71条の解釈として活用する。特に「場所的・時間的接着性」と「秩序維持の必要性」を相関的に考慮する判断枠組みとして引用すべきである。
事件番号: 昭和34(あ)1303 / 裁判年月日: 昭和34年10月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公務執行妨害罪における職務の適法性は、上級公務員の命令を受けた補助公務員が、その命令の意図や実質的な適否に関わらず、自己の職務権限の範囲内で当該命令を執行する限り、原則として肯定される。 第1 事案の概要:大阪刑務所の第三区長Bは、受刑者である被告人に対し、監獄法施行規則に基づき所長代理として諭告…