一 技術吏員である鹿児島県土木出張所長は、土木工事について請負人の指名入札人推薦、入札、施行監督、竣工下検査またはその立会に関する事項はもちろん、これと密接の関係ある工事金の仮払、支払交付等に関する事項を処理する職務権限を有する。 二 鹿児島県の本件各土木出張所は地方自治法一五八条三項(その後の改正によれば五項)、一五条一項の規定に基き同県知事がその権限に属する事務を分掌させるため、昭和二二年第一六号鹿児島県土木出張所設置規則をもつてこれを設置したものであること明らかであるから、法律上根拠があるものである。
一 技術吏員である鹿児島県土木出張所長の職務権限 二 土木出張所(鹿児島県)設置の法的根拠
刑法197条,地方自治法173条,地方自治法158条,地方自治法15条,昭和22年10月鹿児島県規則14号土木出張所庶務規則,昭和22年鹿児島県規則16号鹿児島県土木出張所設置規則
判旨
技術吏員であっても、工事の入札・監督等の事務処理に際して専門技術的見地からの判断を要する場合には、当該事務は職務の範囲に含まれる。また、既に賄賂を費消し利益を享受した後は、後に同額を返還しても追徴を免れない。
問題の所在(論点)
1. 技術吏員が行う工事入札・監督等の事務が、賄賂罪における「職務」に該当するか。 2. 賄賂を費消した後に同額を返還した場合、刑法197条の4後段の追徴を免れるか。
規範
1. 賄賂罪の「職務」とは、公務員の権限に属する事務を指すが、技術吏員の場合であっても、その事務の処理に技術的見地からの鑑識や判断を要する場合には、当該事務は技術吏員の職務範囲に属する。 2. 刑法197条の4の追徴は、没収不能な賄賂の利益を剥奪する制度である。賄賂を費消してその利益を享受した以上、後に同額を贈賄者に返還したとしても、賄賂そのものの返還とはいえないため、追徴を妨げない。
重要事実
鹿児島県の技術吏員(土木出張所長)である被告人が、県知事が国の機関として施行する土木工事に関し、請負人の指名推薦、入札、施工監督等の事務に関し賄賂を収受した。被告人は、技術吏員は事務ではなく技術を掌るものであるから(地方自治法173条)、これらの事務は職務外であると主張した。また、被告人は受領した賄賂46万円を自ら費消した後、贈賄者に対し同額を返還していた。
あてはめ
1. 本件各工事の入札人推薦や監督、工事金の仮払等の事務には、専門技術家的見地から請負人の能力や工事の適否、仮払の要否を判断する必要がある。したがって、これら一切の事務処理は技術吏員の職務範囲に属すると解するのが相当である。 2. 被告人は収受した賄賂を起訴前に自ら費消しており、その時点で賄賂の利益を享受し終えている。その後に行った返還は「賄賂そのもの」の返還ではなく、単なる同額の金員の交付に過ぎないため、没収不能として追徴の対象となる。
結論
被告人の行為は賄賂罪の職務に関連し、職務権限が認められる。また、費消後の返還は追徴を免れる理由にはならず、追徴は正当である。
実務上の射程
公務員の職務権限の拡張的解釈(技術吏員の事務権限)の根拠として利用できる。また、収賄罪における追徴の要件として、費消による利益享受後の返還が追徴を妨げないことを示す重要判例である。
事件番号: 昭和34(あ)463 / 裁判年月日: 昭和34年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賄賂罪における「職務」とは、公務員の権限に属する事務のみならず、これと密接な関係にある行為、及び法令等に基づき実質的に担当している事務も含まれる。 第1 事案の概要:被告人Aは宮崎県の技術吏員であった。Aは本件施設の建設に関し、業者の選定を指導する業務を事実上司っていた。この業者選定の指導行為自体…
事件番号: 昭和33(あ)134 / 裁判年月日: 昭和37年5月29日 / 結論: その他
一 刑法第一九七条にいう「其職務」とは、当該公務員の一般的な職務権限に属するものであれば足り、本人が具体的に担当している事務であることを要しない。 二 熊本県八代地方事務所農地課勤務の事務吏員は、日常担当しない事務であつても、同課に属する農地および農業用施設等災害復旧工事につき事業主体のなす工事請負契約締結の方法、競争…