不法入国者には外国人登録令に基く登録申請義務がない旨の判断は、不法入国の罪と外国人登録証明書不所持の罪が併合罪となるという判断にあたり「不法入国者にも登録申請義務がある」と判示した高裁判例と相反する判断をしたものである。
高等裁判所の判例と相反する判断をした一事例
刑訴法405条3号,外国人登録令(昭和24年政令381号による改正前のもの)4条,外国人登録令(昭和24年政令381号による改正前のもの)3条1項
判旨
本邦に不法入国した外国人であっても、外国人登録法に基づく登録申請義務を負う。したがって、不法入国を理由として直ちに登録申請義務がないと判断することは誤りである。
問題の所在(論点)
不法に入国した外国人に対して、外国人登録法に基づく登録申請義務を課すことができるか。
規範
本邦に在留する外国人は、その入国手続の適法・違法を問わず、外国人登録法上の登録申請義務を負う。不法入国罪の成立と登録申請義務(および不携帯罪等)の成立は別個の問題であり、両者は併合罪の関係に立つ。
重要事実
被告人が本邦に不法入国した事案において、第一審及び原審は、不法入国した外国人には外国人登録法上の登録申請義務がないと判断し、無罪を言い渡した。これに対し検察官が、不法入国者にも登録申請義務を認めるべきとして上告した。
あてはめ
最高裁大法廷判決(昭和31年12月26日)の示した法理によれば、不法入国者であっても登録申請義務を負うことが正当とされる。本件の被告人は不法入国者であるが、その事実によって登録申請義務が免除されるものではない。したがって、登録申請義務を否定して無罪とした原判決及び第一審判決は、法律上の見解を異にするものであり、破棄を免れない。
結論
不法入国者にも登録申請義務は認められる。原判決及び第一審判決を破棄し、本件を京都地方裁判所に差し戻す。
実務上の射程
行政上の管理目的(外国人登録法等)と出入国管理(入管法)は目的を異にするため、不法滞在状態にある者であっても行政上の届出義務や各種義務を免れるわけではないという法理を示す。刑法上の罪数評価(併合罪)を検討する際の前提知識として活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)2684 / 裁判年月日: 昭和32年7月9日 / 結論: 棄却
出入国管理令第二五条は、不法に入国した外国人に対してもその適用があると解するのを相当とする。