株式会社設立のため出資された資金によつて建設された建物が、会社設立前でも出資者の組合財産であると認められる場合は、その組合の事業を委されている者がこれを自己名義に保存登記をした上、自己の債務の弁済に供するため他に譲渡した場合は横領罪を構成する。
設立中の株式会社の財産について横領罪の成立する一事例
刑法252条,民法667条,民法668条,商法535条,商法536条
判旨
民法上の組合における組合財産は組合員の合有に属するため、特定の組合員が組合の事業目的以外に組合財産を処分する行為は、横領罪における「自己の占有する他人の物」を領得する行為に該当する。
問題の所在(論点)
組合財産を保管する組合員が、組合の目的以外(個人債務の弁済等)のために当該財産を処分した場合に、横領罪が成立するか。特に、商法上の匿名組合ではなく民法上の組合である場合の財産の帰属と横領罪の成否が問題となる。
規範
民法上の組合関係が認められる場合、その組合財産は組合員の共有(合有)に属する。したがって、組合財産を保管する組合員が、共同事業の目的範囲外で、自己個人の債務弁済等のためにこれを取り消し得ない形で処分する行為は、不法領得の意思の発現として横領罪(刑法252条1項)を構成する。
重要事実
被告人は、他者との間で共同事業を営む民法上の組合関係にあった。被告人は、本件建物の所有名義を有していたが、これは組合財産であった。しかし、被告人は共同事業から生じた債務の整理のためではなく、共同事業を開始する前に生じていた被告人個人の個人的な債務を弁済するために、当該建物の所有権名義を移転し、処分した。
あてはめ
本件において、被告人と相手方の関係は商法上の匿名組合ではなく、民法上の組合関係にあると認められる。この場合、本件建物は組合員の共有に属する「他人の物」としての性質を有する。被告人は本件建物の名義を有し占有していたが、その処分理由は共同事業の清算等ではなく、事業開始前の個人的な債務の弁済であった。これは、他人の占有を排除して自己の所有物として振る舞う不法領得の意思が認められる処分行為である。
結論
被告人の行為には横領罪が成立する。したがって、有罪とした原判決は相当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、組合財産の私的流用が横領罪を構成することを再確認するものである。答案作成上は、まず民法上の組合であることを認定して「合有(共有)」を導き、その上で「他人の物」該当性を肯定して、委託信任関係に基づく占有と不法領得の意思を論じる際の論拠として使用する。匿名組合(営業者の単独所有)との区別に注意を要する。
事件番号: 昭和27(あ)2538 / 裁判年月日: 昭和28年10月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】横領罪の対象となる金員が被告人の単独所有に属さず、被告人を含む複数人の共有物である場合に、被告人がこれを着服した行為は、他人の物の横領として横領罪を構成する。 第1 事案の概要:被告人は旧a区の総代5名のうちの1人であった。被告人は、自身を含めた旧a区総代5名の共有に属する金員を保管していたが、こ…