団体等規正令により解散を命ぜられた団体の財産接収に従事する公務員が、解散団体の事務所に同団体所有の机と区別せずに並べられてあつたため、第三者所有の机を同団体の所有物と認めて封印した場合において、これを損壊しまたは無効ならしめたときは封印破毀罪が成立する。
封印破毀罪の成立する一事例
刑法96条,団体等規正令4条,解散団体の財産の管理及び処分等に関する政令(昭和23年政令238号)16条
判旨
占領下において、裁判所がその効力を争い得ないとされていた法務総裁の命令等に基づく公務員の職務執行は、特段の事情がない限り、公務執行妨害罪における「職務」の適法性を備える。また、差押等の現場で対象物と区別なく置かれていた物件について、一応当該団体の所有に属するものと認めてなされた封印等の措置は、同罪の構成要件との関係で違法ではない。
問題の所在(論点)
公務執行妨害罪の成立要件である「公務」の適法性が認められるか。特に、(1)裁判権が及ばないとされていた占領下の処分に基づく執行の適法性、および(2)対象物件の帰属が不明確な状況でなされた封印等の措置の適法性が問題となる。
規範
公務執行妨害罪(刑法95条1項)における「職務」の適法性は、当該公務員の抽象的職務権限、具体的職務権限に属し、かつ有効な法令上の要件・手続を履践していることによって判断される。もっとも、当時の統治構造上、裁判所がその効力を審査し得ないとされていた処分に基づく執行については、当該処分が有効に存在する以上、これに従事する公務員の行為は適法な公務の執行と解される。また、強制処分に際し、外観上対象物件と区別し難い状態で存在する物件に対し、一応の所有判断に基づくなされた措置も、直ちに違法とはならない。
重要事実
昭和24年9月、団体等規正令等に基づき法務総裁が団体の解散を命じ、都道府県知事らがその財産を接収する保全措置を実施した。その際、係員である公務員らが接収事務に従事し、事務官らの認印がある封印を施したが、被告人らがこれに抵抗した。また、接収対象外の私物であると主張される机についても、現場では解散団体の机と区別なく並べられていたため、係員はこれに封印を施した。被告人らは、接収処分の根拠法令の違憲性や、引渡令書の不交付という手続違背を理由に、公務の適法性を争った。
あてはめ
(1)本件当時、団体等規正令等は憲法にかかわらず有効な国法として存在しており、法務総裁の処分の効力について日本の裁判所は裁判権を有していなかった。したがって、当該命令に基づく接収行為およびこれに従事する係員の行為は、適法な公務の執行といえる。(2)手続面について、本件は引渡命令(政令5条)ではなく保全措置(同6条)としてなされたため、引渡令書の交付手続を欠いても違法ではない。(3)机の封印についても、接収当時に団体の所有物と区別なく並べられていた以上、一応団体の所有に属すると認めて封印したことは、刑法上の関係において違法な措置とはいえない。
結論
本件接収行為は適法な公務の執行であり、これに対する妨害行為には公務執行妨害罪が成立する。
実務上の射程
本判決は、公務執行の適法性判断において、行為当時の法令の効力や裁判権の限界を重視する。また、現場での物件特定において、外観上区別困難な場合の「一応の判断」に基づく執行を許容する点は、実務上の差押等の適法性争点において、現場の状況に応じた合理的な判断を肯定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和38(あ)1604 / 裁判年月日: 昭和39年8月13日 / 結論: 棄却
一 被告人の所為をもつて刑法第九六条所定の「公務員の施した差押の標示を無効ならしめた罪」にあたるとした原判断は正当である。 二 (原判決の判断の要旨)執行吏が仮処分の執行として物の占有を自己に移し、その旨の標示をした上、現状不変更を条件として使用を許したときは、仮処分の執行を受けたものは、これを使用するについて、破損箇…
事件番号: 昭和26(れ)89 / 裁判年月日: 昭和26年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公務執行妨害罪の成立には、行為者が、相手方が公務員であり、かつ、公務を執行中であることを認識している必要がある。本判決は、捜索押収令状を携行した税務官吏による公務執行を知りながら暴行を加えた場合、同罪の主観的要件を満たすと判断した。 第1 事案の概要:被告人らは、大蔵事務官Aらが捜索押収令状を携行…