供出米の検査に際し俵から刺とられるいわゆる「刺米」をいわゆる「匿名供出」として生産者から売渡を委託された米であるかのように装い政府に対し売渡を申し込み、係員を誤信せしめた結果預金として口座に代金を振り込ませて財産上の利益を得た場合には、詐欺罪を構成する。
いわゆる「刺米」をいわゆる「匿名供出」として生産者から売渡を委託された米であるかのように装い係員を欺罔し、その代金を預金口座に振り込ませる行為と詐欺罪の成否
刑法246条,食糧管理法3条1項,主要食糧検査令施行規則2条1項,主要食糧検査令施行規則3条5項
判旨
政府所有の米を、あたかも正当な生産者からの委託を受けた匿名供出米であるかのように装って政府に売り渡し、高額な報奨代金を得る行為は詐欺罪を構成する。当該行為が横領罪の性質を併せ持つとしても、詐欺罪の成立は妨げられない。
問題の所在(論点)
政府所有の米(刺米)を政府に匿名供出する行為が、横領罪の事後処分にとどまるのか、それとも別個に詐欺罪を構成するのか。
規範
他人の占有する財物を自己の所有物のように装い、相手方を欺いて本来支払われるはずのない代金や利益を得る行為は、詐欺罪(刑法246条)の構成要件に該当する。また、先行する不法領得行為が他罪(横領罪等)を構成し得る場合であっても、新たな欺罔行為によって別個の財産的利益を得たときは、当該他罪とは別に詐欺罪が成立する。
重要事実
被告人らは共謀の上、供出米の検査時に俵から採取された政府所有の「刺米」を、生産者から売渡委託を受けた米であるかのように装って政府に匿名供出(食糧管理法に基づく超過供出)を申し込んだ。食糧検査官はこれを正当な供出米と誤信して支払証票を発行し、係員はこれに基づき、通常価格の約3倍に及ぶ特別多額な超過供出報奨代金を被告人らの預金口座に振り込ませ、財産上の利益を得させた。
あてはめ
匿名供出は、生産者が割当量を超えて供出した場合に支払われる「特別多額な報奨代金」という利益を目的とするものである。本件では、本来受給権のない政府所有の米を、委託を受けた米と偽って申し込むという欺罔行為が行われ、これによって政府側に代金支払の義務があるとの錯誤を生じさせている。この報奨代金という特別の利益を目的とする以上、仮に刺米の取得が横領罪を構成するとしても、その後の欺罔による代金取得は不可罰的事後処分にはあたらず、詐欺罪を成立させる。したがって、口座への振込という財産上の利益を得た段階で詐欺罪が成立する。
結論
被告人らの行為は詐欺罪を構成し、原判決の判断は正当である。上告棄却。
実務上の射程
不法に領得した物(本件では横領物としての性質を持つ刺米)を、真実の権利者を装って処分し、対価を得る行為における詐欺罪の成否に有効である。特に、単なる物の処分にとどまらず、制度上の加算金や報奨金など、欺罔行為によって初めて発生する「特別の利益」を詐取した場合には、先行行為とは別個の詐欺罪が成立することを明確に示している。
事件番号: 昭和24(れ)399 / 裁判年月日: 昭和26年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】供出義務を免れ、かつ還元配給を受ける目的で、保有米の事実を秘匿して虚偽の申告を行い、担当吏員を誤信させた行為には、詐欺罪の犯意が認められる。 第1 事案の概要:被告人は、昭和21年度の収穫米約13石および前年度からの繰越し籾約6石を保有していた。しかし、供出義務の一部を免れ、かつ主食の還元配給を受…